米イスラエルによるイラン攻撃:現状と今後の展望
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対し大規模な共同軍事攻撃を開始しました。この作戦は米国側が「Operation Epic Fury(猛烈な怒り作戦)」、イスラエル側が「Roaring Lion(咆哮するライオン)」と呼称しており、最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡を含む指導部・軍事施設への精密打撃が確認されています。攻撃は3月1日時点で第2日目を迎え、双方の報復が続いています。本稿では、報道された内容に基づき、攻撃の概要、目的、イランの対応、そして専門家による分析を整理します。
攻撃の開始と主な経緯
攻撃は2月28日午前9時45分頃(イラン時間)に開始され、米国ミサイル・ドローンとイスラエル空軍ジェット機(200機以上)により実施されました。標的はテヘラン、イスファハン、ゴム、カラジ、ケルマーンシャーなどの都市に及び、500カ所以上の軍事・核関連施設が攻撃対象となりました。トランプ米大統領はTruth Socialで作戦開始を発表し、イスラエル首相ネタニヤフ氏も事前合意に基づく先制攻撃と位置づけました。3月1日にはイスラエルがテヘラン中心部への追加攻撃を実施しています。
被害状況と人的損害
イラン側では赤新月社によると全国で201人死亡、747人負傷(2月28日夜時点)。ミナブ郡の女子小学校が被弾し108人以上が死亡するなど、民間人被害も報告されています。指導部ではハメネイ師をはじめ40人以上の高官・軍幹部が死亡したと米側は発表。一方、イスラエル側ではイラン報復ミサイルにより1人死亡、121人負傷。湾岸諸国(バーレーン、クウェート、カタール、UAEなど)でもイラン攻撃による死傷者が確認されています。イラン全土でインターネット遮断が続き、情報統制が強化されています。
米国・イスラエルの攻撃目的
米国の立場とトランプ大統領の発言
トランプ大統領は攻撃目的を「イランの核・ミサイルプログラムの完全破壊、海軍の無力化、体制変更」と明言。イラン国民向けビデオで「この国は君たちのものだ。世代で唯一の機会だ」と呼びかけ、作戦は「1週間または必要とする限り継続する」と述べています。核交渉中の突破口報告があった直後の攻撃であり、外交的解決の放棄を意味します。
イスラエルの立場
イスラエルは「イランの核・ミサイル脅威の排除と代理勢力支援の阻止」を目的とし、存在脅威の除去を強調。ネタニヤフ首相は「イラン国民が専制を打倒する条件を整える」との認識を示しています。作戦は2週間前の米イスラエル首脳会談で日程が合意されていたと報じられています。
イランの対応と報復
ミサイル攻撃と地域波及
イラン革命防衛隊(IRGC)は即座に報復を宣言。イスラエル本土および湾岸27カ所の米軍基地を標的としたミサイル・ドローン攻撃を実施。ホルムズ海峡の航行禁止を通告し、石油輸出に影響が出ています。イラン国営メディアは「40日間の服喪期間」を宣言し、暫定指導部が「壊滅的な報復」を警告しています。
国内情勢
ハメネイ師死亡確認後、テヘランなどで体制批判デモと親体制集会が併存。野党勢力や国外亡命者(レザ・パーレビ氏など)は「体制転換の好機」と呼びかけていますが、現時点で大規模蜂起の兆候は確認されていません。憲法上、大統領・司法長官・監視評議会メンバーが暫定指導を担うとされています。
戦争の期間に関する専門家の分析
米外交問題評議会(CFR)の見解
CFR専門家らは「空爆のみでは体制転換は困難」と指摘。レイ・タケヤ氏(Ray Takeyh)は「爆撃で政権を消滅させるのは稀」とし、イスラム共和国はイデオロギーとIRGCの支持で存続する可能性が高いと分析。リンダ・ロビンソン氏は「体制転換目標を維持すれば長期化・拡大のリスク」と警告。マックス・ブート氏は「戦争開始は容易だが成功裏に終結させるのは極めて困難」と述べ、短期決着の見通しに慎重です。トランプ氏の「1週間または必要限り」という発言を踏まえ、キャンペーンとしての継続が想定されますが、地上軍投入なしの限界も指摘されています。
日本専門家の評価
日本エネルギー経済研究所中東研究センター長の坂梨祥氏は「攻撃は少なくとも数日続く」との見方。軍事施設・核施設の破壊が完了するか、体制転換の目処が立つまで継続する可能性を指摘。一方、イラン側報復も「在庫の制約はあるが、メンツのためにしばらく続く」と分析。現時点で明確な「落としどころ」は見えず、トランプ大統領の判断が鍵になるとしています。慶應義塾大学大学院の田中浩一郎教授も、交渉破綻後の軍事行動として短期集中型ではなく、準備された長期作戦の性格を有すると解説しています。
RGC支配下の体制転換の困難さと長期化の主流見解
今回の攻撃が「体制転換」を最終目標とする以上、多くの専門家はイラン革命防衛隊(IRGC)の強固な支配構造が存続の鍵であり、空爆中心の作戦では本質的な崩壊が極めて困難だと指摘しています。Atlantic CouncilやChatham House、CFRなどの分析では、IRGCが経済・治安・軍事の核心を握り、イデオロギー的忠誠と自己修復能力を持つため、ハメネイ師の死亡や上層部打撃だけでは「IRGCistan(IRGC主導の軍事国家)」への移行が現実的で、民主化ではなくより強硬な体制が残る可能性が高いとされています。The ConversationやForeign Affairsも「イラン体制は生存のために設計されている」「長期戦争が予想される」との見方を示しており、日本側でも東京外語大・松永泰行教授らが「イスラム体制転換は困難」「未完の作戦にリスク」と警告。全体として、IRGCによる支配の体制転換を狙う限り、短期決着は少数派で、長期化・消耗戦の公算が大半の専門家見解となっています。戦闘は現在も進行中であり、状況は極めて流動的です。
国際社会の反応と今後の注意点
国連事務総長は双方のエスカレーションを非難。ロシアは「無差別武装攻撃」と批判、中国・EU諸国は自制を求めています。一方、英国などはイラン核保有阻止を支持。湾岸アラブ諸国はイラン報復を強く非難する一方、地域不安定化を懸念しています。
