小学館『マンガワン』、性加害で罰金刑を受けた漫画家を別名義で再起用 配信停止と公式謝罪を発表
事件の概要
小学館が運営する漫画アプリ「マンガワン」では、2022年から連載されていた作品『常人仮面』の原作者が、過去に性加害事件で児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪により罰金刑を受けた漫画家であることが2026年2月27日に判明しました。
編集部は同日、公式サイトで「原作者の起用判断および確認体制に問題があった」として、同作品の配信停止および単行本の出荷停止を発表し、関係者への謝罪を行いました。
漫画家の経歴と加害事実
問題の原作者は、山本章一氏(『堕天作戦』の作者)と同一人物です。山本氏は2020年2月、当時札幌市の通信制高校の教員として在職中、元生徒の女性に対する児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で罰金30万円の略式命令を受けました。これにより、当時連載中だった『堕天作戦』は休載となりました。
被害を受けた女性は長期にわたる性被害により心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、損害賠償を求めて提訴。2026年2月20日の札幌地方裁判所判決では、山本氏に対し1100万円の支払いが命じられました。
編集部の関与と示談交渉
2021年5月、マンガワン編集部の担当編集者は、被害女性と山本氏が和解を協議していたLINEグループに参加しました。編集者は①男性が示談金150万円を支払う②女性が連載再開の中止要求を撤回する③性加害について口外禁止――などの条件を提案し、公正証書の作成を促していました。
女性が納得せず和解は成立しませんでしたが、この編集者の行動は「不適切な対応」であったと編集部が認めています。
別名義での再起用
2020年の事件後、『堕天作戦』の連載を中止したにもかかわらず、2022年にマンガワン編集部は山本章一氏を「一路一」名義で原作者として起用し、新連載『常人仮面』(作画:鶴吉繪理)を開始しました。
編集部は公式声明で「本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした」と明言しています。
マンガワン編集部の公式謝罪内容
編集部は公式サイトで以下の声明を発表しました。
『常人仮面』につきまして、原作者の起用判断および確認体制に問題があったため、配信を停止し、単行本の出荷を停止いたしました。
原作者の一路一氏は、『堕天作戦』の作者である山本章一氏と同一人物です。2020年に、山本氏が逮捕・略式起訴され罰金刑を受けたことを踏まえ、『堕天作戦』の連載を中止いたしました。しかしながら、2022年に、マンガワン編集部は、一路一名義の原作で新連載『常人仮面』を開始いたしました。
本来であれば原作者として起用すべきではありませんでした。何よりも被害に遭われた方に対し、心よりお詫び申し上げます。編集部として責任を重く受け止めております。本件により、読者の皆様、『常人仮面』作画の鶴吉繪理先生や寄稿いただいている作家の皆様、ならびに関係者の皆様に、多大なご心配とご迷惑をおかけしておりますことについて、深くお詫び申し上げます。
小学館は関係者の調査を進め、必要な対応を行う方針を示しています。
大童澄瞳氏による『映像研には手を出すな!』更新停止の発表
本件を受け、マンガワンで『映像研には手を出すな!』を連載中の漫画家・大童澄瞳氏は、2026年2月27日に自身のXアカウントで更新停止を発表しました。
大童氏は声明の中で、性被害の話題から強い心理的負担を感じること、事件に関する情報が不足していたことを挙げつつ、報道された事実認定部分を「まったく非難されるべき事であり、看過できない」と断じました。また、マンガワン編集部が加害者と被害者に対し適切でない対応を取ったことが明らかになったとして、経緯の説明や改善方針が十分に示されない限り協力しない方針を表明。自作品の更新を停止する措置を講じたと説明しています。
なお、『映像研には手を出すな!』は大童氏の唯一の連載作品であり、この決定は収益面での大きな影響を伴うものです。大童氏は小学館に対し、問題の全経緯の調査・説明・公表、関係者への謝罪と補填を求めています。
本件のポイント
本件は、性加害事件後の漫画家起用判断、編集部の被害者対応、確認体制の不備が問題視された事例です。マンガワン編集部は被害者への謝罪を最優先に位置づけ、作品の配信・出荷停止という措置を取ったことを公表しました。また、複数の連載作家が同様に更新停止や配信停止を表明するなど、業界全体に波及する事態となっています。
