韓国民主主義の試練:ユン前大統領無期懲役判決と政権交代時の前大統領訴追史

ユン・ソクヨル前大統領の無期懲役判決概要

韓国のユン・ソクヨル前大統領は、2026年2月19日にソウル中央地裁で、2024年12月の戒厳令宣言に関連する反乱罪で有罪判決を受け、無期懲役を言い渡されました。この判決は、検察が求刑した死刑を回避したものですが、韓国民主主義に対する重大な脅威として位置づけられています。

判決の詳細

裁判所は、ユン前大統領を反乱の首謀者として認定し、無期懲役を宣告しました。判決では、ユン氏が軍と警察を動員して野党主導の国会を不法に占拠し、議員を逮捕しようとした行為が、相当な期間にわたる権力掌握の試みであったと判断されています。検察は死刑を求めたものの、裁判所はこれを退け、無期懲役を選択しました。この事件で死傷者が出なかったことが、死刑を避けた要因の一つと見られます。

事件の背景

事件は2024年12月3日に発生しました。ユン前大統領は、野党の政治的圧力に対抗するため、突然戒厳令を宣言しました。この宣言は数時間で撤回されたものの、韓国を憲法危機に陥れました。宣言後、国会で弾劾決議が可決され、ユン氏は大統領職を解任されました。2025年1月から逮捕・起訴され、2025年4月から裁判が開始されました。この反乱罪は、ユン氏に対する複数の刑事裁判のうち最も重い罪状です。

他の被告の判決

同裁判では、元国防相のキム・ヨンヒョン氏も反乱の主要な役割を果たしたとして有罪となり、30年の懲役刑が言い渡されました。この判決は、ユン氏の行動に協力した関係者に対する責任追及を示しています。

判決の法的根拠

この判決の法的根拠は、韓国刑法第87条に基づく内乱の首魁罪にあります。この条項は、内乱を主導した者に対して、死刑、無期懲役、または無期懲役(労働付き)を科す可能性を規定しています。裁判所は、ユン氏の戒厳令宣言が憲法秩序を乱す意図を持って行われ、軍隊を動員して国会を封鎖し、主要政治家を逮捕しようとした行為が内乱に該当すると認定しました。判決では、計画の不十分さや物理的力の使用を制限しようとした点、計画の失敗を考慮し、検察の死刑求刑を退けて無期懲役を選択したと説明されています。この判断は、韓国法の下で内乱罪が死刑または無期懲役のみを罰則とする厳格な規定に基づいています。

判決の意義

この判決は、韓国における民主主義の維持と、権力乱用に対する司法の厳格な対応を象徴するものです。アムネスティ・インターナショナルは、これを説明責任の重要な一歩と評価しています。ユン氏は控訴する可能性が高いですが、この判決は韓国史上、元大統領に対する最も重い刑罰の一つとなります。

韓国における政権交代時の大統領訴追事例

韓国では、民主化以降の政権交代時に前大統領が刑事責任を問われるケースが複数見られます。これらの事例は、主に腐敗、権力乱用、または過去の政治的事件に関連しており、司法の独立性と政治的清算の側面を反映しています。以下では、具体的な事例を基に詳述します。

歴史的背景

韓国は1987年の民主化運動以降、複数回の政権交代を経験しています。この過程で、前政権の指導者が後任政権下で捜査・起訴されるパターンが繰り返されています。これは、軍事独裁時代からの遺産や、権力集中による腐敗の構造が背景にあり、政権交代が司法追及の機会を提供する形となっています。

全斗煥元大統領の事例

全斗煥氏は1979年のクーデターで権力を掌握し、1980年から1988年まで大統領を務めました。政権交代後の1995年、民主化後の文民政権下で逮捕され、光州事件やクーデター関連の反乱罪などで死刑判決を受けました。この判決は後に無期懲役に減刑され、1997年に恩赦されました。このケースは、軍事独裁者に対する初の司法追及として象徴的です。

盧泰愚元大統領の事例

盧泰愚氏は1988年から1993年まで大統領を務めました。政権交代後の1995年、腐敗やクーデター関連の罪で逮捕され、終身刑を言い渡されました。全斗煥氏と同様に、1997年に恩赦を受けました。この事例も、軍事政権から民主化への移行期における政治的清算を示しています。

李明博元大統領の事例

李明博氏は2008年から2013年まで大統領を務めました。政権交代後の2018年、朴槿恵政権の後任である文在寅政権下で、収賄や横領などの腐敗罪で逮捕され、15年の懲役刑を言い渡されました。2022年に恩赦を受けました。このケースは、保守政権から進歩政権への交代が捜査を加速させた例です。

朴槿恵元大統領の事例

朴槿恵氏は2013年から2017年まで大統領を務めました。2016年のスキャンダル発覚後、2017年に弾劾・逮捕され、収賄などの罪で24年の懲役刑を言い渡されました。2021年に恩赦を受けました。この事例は、政権交代前の国民運動が弾劾を導き、後任政権で裁判が進んだ形です。

ユン・ソクヨル元大統領の事例

ユン・ソクヨル氏は2022年から2025年まで大統領を務めました。2024年の戒厳令宣言後、弾劾・解任され、2026年に反乱罪で無期懲役の判決を受けました。このケースは、政権交代後の特別検察による追及が特徴です。

事例の共通点と意義

これらの事例では、政権交代が前大統領の免責特権喪失と司法捜査の開始を促す点が共通しています。多くの場合、恩赦で刑が軽減されるものの、韓国政治の腐敗浄化プロセスとして機能しています。ただし、これが政治的報復として批判される側面もあります。