・公正取引委員会による日本郵便のフリーランス法違反調査
・フリーランス法の詳細
公正取引委員会による日本郵便のフリーランス法違反調査
公正取引委員会は、フリーランス法違反の疑いで日本郵便に対する調査を開始しました。この調査は、2024年の法施行以来最大規模の事案となる可能性があります。
調査の背景
日本郵便は2025年9月から10月に本社と全国13支社を対象とした社内調査を実施し、フリーランス223人に対する計380件の業務委託で取引条件の文面明示がなされていなかったことを確認しました。この結果は同年12月に報道され、日本郵便も内容を認めました。
違反の疑い内容
フリーランス法は、発注元に対し業務内容、報酬額、支払期日などを書面やメールで明示することを義務付けています。日本郵便の場合、研修講師などの業務をフリーランスに委託する過程で、これらの条件が明示されていませんでした。本社で23件、全国13支社で357件の事例が社内調査で判明しています。
公取委の調査範囲と対応
公取委は、違反事案の規模の大きさと全国的な現場の広がりを考慮し、調査を開始しました。本社と支社に加え、全国約2万の郵便局での取引も対象とし、日本郵便に対し郵便局分の調査と報告を求めています。違反が認定された場合、改善や再発防止を求める勧告を検討する方針です。
現場の混乱状況
日本郵便は、取引条件を記した発注書を委託先にメールで送る運用に変更しましたが、繁忙期の2025年12月に現場で混乱が生じました。フリーランスに限らず民間企業への委託も含む指示に対し、支社と郵便局から疑問の声が上がり、給湯器設置や廃棄物処分などの日常業務に関する問い合わせが殺到しました。従来の口頭発注慣行からの変更が原因です。
日本郵便の再発防止策
日本郵便は、社内マニュアルの記載が分かりにくく、周知が不十分だったことを認め、再発防止に取り組みます。2026年2月にマニュアルを改訂し、本社と支社では既に取引条件の明示方法を変更済みです。郵便局でも近く変更を予定しています。
関係者のコメント
林芳正総務相は2025年12月16日の記者会見で、この事案を大変遺憾とし、再発防止に向けた取り組みを注視し、法令順守の徹底を監督すると述べました。公取委事務総長は2025年12月17日の定例会見で、個別事案のコメントを控えましたが、フリーランス法の明示義務違反が多い理由として、周知の不十分さと現場の理解不足を指摘しました。
フリーランス法の詳細
フリーランス法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)で、令和5年法律第25号として2023年5月12日に公布され、2024年11月1日に施行されました。この法律は、フリーランスが安心して働ける環境の整備を目的とし、取引の適正化と就業環境の整備を定めています。
フリーランスの定義
この法律における「フリーランス」(特定受託事業者)とは、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないものを指します。従業員を使用しない個人事業主だけでなく、一人社長のような法人も該当します。従業員の使用とは、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することを意味し、同居親族のみを使用する場合は該当しません。また、副業で業務委託を受ける場合も対象となります。
取引の適正化に関する規定
発注事業者に対し、フリーランスへの業務委託時に以下の義務が課せられます。これらの規定は公正取引委員会と中小企業庁が主に執行します。
- 取引条件の明示:業務委託した場合、直ちに書面または電磁的方法(メール、SNSメッセージ等)で明示。明示事項には、給付の内容、報酬の額、支払期日、業務委託事業者・フリーランスの名称、業務委託をした日など9項目が含まれます。口頭での明示は認められません。
- 報酬支払期日の設定と遵守:給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定め、期日までに報酬を支払う。
- 禁止行為:1か月以上の業務委託の場合、7つの行為が禁止されます。これには、受領拒否(フリーランスに責任がないのに受取を拒む)、減額、不当返品、強制購入、強制役務提供、不当な経済上の利益提供強要、報酬の早期支払強要などが含まれます。
就業環境の整備に関する規定
発注事業者に対し、フリーランスの就業環境整備が義務付けられます。これらの規定は厚生労働省が主に執行します。
- ハラスメント対策:ハラスメント行為に係る相談体制の整備。
- 育児・介護等への配慮:フリーランスの育児や介護に対する配慮。
- 募集情報の提供:広告等でフリーランスの募集情報を提供する場合、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示の禁止。
フリーランス法と下請法の違い
フリーランス法は資本金要件がなく、フリーランス(従業員を使用しない事業者)を保護対象とし、取引適正化に加え就業環境整備を目的とします。一方、下請法は資本金1,000万円以下の下請事業者を対象とし、資本金1,000万円超の企業による発注に限定され、取引適正化と下請事業者の利益保護を目的とします。
