南鳥島沖でのレアアース泥引き揚げ成功の概要
内閣府と海洋研究開発機構(JAMSTEC)は2026年2月2日、小笠原諸島・南鳥島沖の水深約6000メートルの海底からレアアースを含む泥の連続引き揚げに成功したと発表しました。この試みは世界初のものであり、水深6000メートル級の深海底から泥を連続的に回収する技術を確認しました。
レアアース(希土類元素)は、現代のハイテク産業に欠かせない重要な資源です。主な用途として、ネオジムやジスプロシウムを使った高性能永久磁石(ネオジム磁石)は、電気自動車(EV)の駆動モーター、風力発電機、ハイブリッド車のモーター、MRI装置などに広く使用されています。また、セリウムは自動車の排気ガス浄化触媒やガラス研磨材、ユウロピウムやテルビウムはLED照明や蛍光体の発光材料として欠かせません。さらに、ランタンやイットリウムはレーザー材料や耐熱合金、スマートフォンやパソコンなどの電子機器の小型化・高性能化にも貢献しています。これらのレアアースは現在、世界供給の約60〜70%を中国が占めており、供給リスクが懸念される中、国産資源の開発が強く求められています。
このプロジェクトは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として実施されており、地球深部探査船「ちきゅう」を使用しています。成功により、2028年度以降の産業化に向けた採算性の検証と精製技術の開発が進む見込みです。
作業の詳細
使用された技術と方法
探査船「ちきゅう」から長さ約10メートルの揚泥管を約600本つなぎ、水深約6000メートルの海底に下ろしました。海底に設置した採鉱機で泥を細かく砕き、海水と混ぜた後、揚泥管を通して船上に回収する方式を採用しています。この方法により、泥を連続的に引き揚げることが可能となりました。
タイムライン
探査船「ちきゅう」は2026年1月12日に静岡県清水港を出航し、1月17日に南鳥島沖の試掘海域に到着しました。1月18日から揚泥管の投入を開始し、1月30日に海底に到達しています。回収作業は1月30日から実施され、2月1日未明に最初の泥を引き揚げました。試掘は3か所で行われ、機器に目立ったトラブルはありませんでした。
探査船は2月15日に清水港に帰港する予定です。帰港後に引き揚げた泥の成分分析を行います。
レアアース泥の精製技術について
南鳥島沖のレアアース泥は、魚の骨や歯を構成するリン酸カルシウム(アパタイト)にレアアースが取り込まれた形で存在しています。そのため、精製の第一歩としてカルシウムを除去する必要があります。
精製技術については、陸上のレアアース鉱石を精製する既存の技術を応用できると見込まれています。主な工程として、揚泥された泥から希塩酸などの酸を用いたリーチング(浸出)を行い、レアアースを溶液中に抽出します。この抽出液を陸上工場へ輸送し、溶媒抽出法やイオン交換法などを用いて個々のレアアース元素を分離・精製します。
南鳥島レアアース泥の大きな利点は、陸上鉱石と異なり放射性物質(トリウムやウラン)やヒ素などの有害物質をほとんど含まないため、廃棄物処理工程が少なく、環境負荷が低いクリーンな資源である点です。これにより、従来のレアアース精製で課題となる産業廃棄物の発生を大幅に抑えられる可能性があります。
ただし、海底泥からレアアースを精製した実例はほとんどなく、今回の引き揚げ成功を受けて、帰港後の泥を用いた実際の精製試験が行われます。これにより、精製プロセスの効率化や最適化が進められ、2027年以降の大規模実証試験では脱水・分離工程を含めた一連の生産プロセスが検証される予定です。
今後の展望
今回の成功により、2027年2月に予定されている1日当たり350トンの大規模採掘システムの実証に移行することが可能となりました。政府関係者は、作業が順調に進んでいることを強調しています。
このプロジェクトは、中国への依存度が高いレアアースの国産化に向けた重要な一歩であり、技術的な確証を得た形となっています。
