傍観者効果の概要
傍観者効果とは、社会心理学の用語で、緊急事態が発生した際に、周囲に多くの人がいる場合に、個人が援助行動を起こしにくくなる現象を指します。この効果は、責任の分散や複数無知などのメカニズムによって説明されます。
実験の背景
傍観者効果の研究は、1964年にニューヨークで起きたキティ・ジェノヴィーズ事件をきっかけに始まりました。この事件では、女性が暴漢に襲われ、38人の目撃者がいたにもかかわらず、誰も警察に通報しなかったと報じられました。この出来事が、社会心理学者たちに集団心理の影響を調べる動機を与えました。
主な実験
発作を装った実験 (1968年)
研究者であるビブ・ラタネとジョン・ダーリーは、大学生を対象にグループディスカッションの設定で実験を行いました。参加者を2名、3名、または6名のグループに分け、それぞれを個室に配置し、マイクとインターフォンを使用して議論させました。議論の途中で、1人の参加者がてんかん発作を装い、助けを求める状況を演出しました。
結果として、2名のグループでは全員が援助行動を起こしましたが、6名のグループでは38%の参加者が全く援助行動を起こしませんでした。また、目撃者が1人だけの場合は約85%が助けに行ったのに対し、5人のグループでは約31%に低下しました。この実験は、傍観者の数が増えるほど援助行動が抑制されることを示しました。
煙が充満する部屋の実験 (1968年)
同じくラタネとダーリーによる実験で、参加者を部屋に置き、アンケート記入をさせました。記入中に部屋に煙を注入し、反応を観察しました。条件は、参加者が1人だけの場合、3人のグループの場合、そして2人の共謀者(反応しない人)と一緒の場合に分けられました。
結果、1人だけの場合は75%の参加者が煙を報告しましたが、3人のグループでは38%、共謀者と一緒の場合では10%しか報告しませんでした。この実験は、他者の反応を参考にし、緊急性を判断してしまう複数無知の影響を示しています。
女性の転倒を装った実験 (1969年)
ラタネとジュディス・ロディンによる実験で、参加者をマーケットリサーチ会社の部屋に呼び、アンケート記入をさせました。隣室から書類を扱う音がした後、転倒音と悲鳴が聞こえる状況を再現しました。条件は、参加者が1人だけのものと、他人と一緒のものに分けられました。
1人だけの条件では、悲鳴から40秒以内に約90%の参加者が助けに行きましたが、他人と一緒の条件では120秒経過しても約40%しか助けに行きませんでした。この結果は、周囲に他者がいることで行動が抑制されることを裏付けています。
責任の分散の詳細
責任の分散とは、傍観者効果の主要なメカニズムの一つで、緊急事態において傍観者の数が増えるほど、各個人が感じる責任感が薄れる現象を指します。個人が一人でいる場合、責任は自分だけに集中するため、援助行動を起こしやすくなります。しかし、複数の傍観者がいる場合、責任が分散され、「他の誰かが助けるだろう」と考える傾向が生じ、結果として誰も行動を起こさない可能性が高まります。
この概念は、ラタネとダーリーの実験で実証されており、例えば発作を装った実験では、グループの人数が増えるにつれて援助率が低下した結果が、責任の分散を支持しています。責任の分散は、個人の行動選択に集団の存在がどのように影響するかを説明する重要な要因です。
