・社会意識に関する世論調査
・国や社会との関わりについて
・社会の現状に対する認識について
・国の政策に対する評価について
・調査の総括
社会意識に関する世論調査
内閣府は2025年12月19日に、社会意識に関する世論調査の結果を公開しました。この調査は、社会や国に対する国民の基本的意識の動向を把握し、行政の基礎資料とすることを目的としています。調査方法は郵送法で、全国18歳以上の日本国籍を有する3,000人を対象に、2025年10月23日から11月30日まで実施されました。回収数は1,604人(回収率53.5%)です。この調査は1968年度から原則毎年行われており、今回が54回目となります。この結果から、国民の社会意識の全体像が把握でき、政策立案の参考となることがわかります。
国や社会との関わりについて
このセクションでは、国民の国や社会に対する意識や関与度が問われました。この結果から、国民の愛国心や社会貢献意欲、地域とのつながりなどの傾向が明らかになります。
国を愛する気持ち
「国を愛する」という気持ちについて、非常に強いと答えた人は9.2%、どちらかといえば強いと答えた人は43.4%でした。一方、どちらともいえないは37.8%、どちらかといえば弱いは7.5%、非常に弱いは1.7%です。また、今後この気持ちを国民の間に育てる必要があると考える人は、どちらかといえばそう思うを含めて84.4%に上ります。この結果から、過半数(52.6%)が比較的強い愛国心を感じている一方で、相当数(37.8%)が中立的な立場を取っていることがわかります。また、愛国心の育成に対する強い支持(84.4%)が示されています。
国や社会への関心と個人生活
国民は国や社会のことにもっと目を向けるべきだと思う人は、どちらかといえばそう思うを含めて58.9%でした。これに対し、個人生活の充実を重視すべきだと思う人は、どちらかといえばそう思うを含めて39.9%です。この結果から、社会や国への関与を優先する傾向(58.9%)が個人生活の重視を上回っていることがわかります。
社会への貢献意欲
日頃、社会のために役立ちたいと思っている人は62.2%で、その具体的な内容として、自然・環境保護に関する活動(35.2%)、社会福祉に関する活動(31.9%)、自主防災活動や災害援助活動(23.5%)などが挙げられます。この結果から、大多数(62.2%)が社会貢献を意識しており、特に環境保護や福祉、災害援助分野への関心が高いことがわかります。
利益の優先順位
今後、日本人は個人の利益よりも国民全体の利益を大切にすべきだと思う人は、どちらかといえばそう思うを含めて52.7%でした。一方、国民全体の利益よりも個人個人の利益を大切にすべきだと思う人は、どちらかといえばそう思うを含めて41.9%です。この結果から、集団的利益を優先する意見(52.7%)が個別利益を重視する意見を若干上回っていることがわかります。
地域での付き合い
地域での付き合いをよくまたはある程度している人は53.9%ですが、望ましい付き合いの程度としては、地域の行事や会合に参加したり困ったときに助け合う(26.4%)、地域の行事や会合に参加する程度(28.1%)が主な意見です。この結果から、半数以上(53.9%)が地域との関わりを持っている一方で、理想的な関わりとしてイベント参加や相互援助を求める声が多いことがわかります。
社会の現状に対する認識について
このセクションでは、現在の世相や社会の満足度についての認識が調査されました。この結果から、国民の社会に対する肯定的・否定的イメージと満足度の分布が明らかになります。
現在の世相の明るいイメージ
明るいイメージとして、平和である(59.4%)、安定している(20.7%)、おもいやりがある(20.0%)などが選ばれました。平均選択数は157.7です。この結果から、平和(59.4%)と安定(20.7%)が主な肯定的イメージとして挙げられ、社会の明るい側面としてこれらが認識されていることがわかります。
現在の世相の暗いイメージ
暗いイメージとして、ゆとりがない(44.3%)、自分本位である(39.8%)、無責任の風潮がつよい(36.2%)などが挙げられます。平均選択数は223.5です。この結果から、ゆとり不足(44.3%)や自己中心性(39.8%)が主な否定的イメージとして挙げられ、社会の暗い側面としてこれらが懸念されていることがわかります。
日本の誇りに思う点
誇りに思うこととして、社会の安定(59.7%)、美しい自然(57.5%)、すぐれた文化や芸術(54.0%)、長い歴史と伝統(49.1%)が上位です。平均選択数は382.4です。この結果から、社会の安定(59.7%)や自然(57.5%)、文化(54.0%)が国民の誇りの主な源泉となっていることがわかります。
社会の満足している点
満足している点として、良質な生活環境が整っている(42.5%)、心と身体の健康が保たれる(21.0%)、働きやすい環境が整っている(15.1%)などが挙げられますが、特にないと答えた人は27.9%です。平均選択数は173.9です。この結果から、生活環境(42.5%)が主な満足点である一方で、満足点なし(27.9%)の割合も一定数存在することがわかります。
社会の満足していない点
満足していない点として、経済的なゆとりと見通しが持てない(62.9%)、子育てしにくい(27.7%)、若者が社会での自立を目指しにくい(27.6%)が主です。平均選択数は266.1です。この結果から、経済的ゆとり不足(62.9%)が圧倒的な不満点として挙げられ、子育てや若者自立の難しさも懸念されていることがわかります。
社会全体の満足度
現在の社会に満足しているまたはある程度満足している人は53.8%で、あまり満足していないまたは満足していない人は45.3%です。この結果から、社会全体に対する満足度が半数以上(53.8%)を占める一方で、不満足もほぼ半数(45.3%)に近いことがわかります。
国の政策に対する評価について
このセクションでは、政策への反映度と改善策、状況の方向性についての評価が問われました。この結果から、国民の政策評価と改善への提言が明らかになります。
政策への国民意見の反映
国の政策に国民の考えや意見がかなりまたはある程度反映されていると思う人は26.5%で、あまりまたはほとんど反映されていないと思う人は71.1%です。この結果から、政策への意見反映を少数(26.5%)しか感じていない一方で、大多数(71.1%)が不十分だと認識していることがわかります。
反映を良くするための方法
よりよく反映されるようにするには、政治家が国民の声をよく聞く(27.6%)、国民が国の政策に関心を持つ(18.9%)、国民が選挙のときに自覚して投票する(15.9%)が提案されています。この結果から、政治家の傾聴(27.6%)や国民の関心向上(18.9%)が主な改善策として挙げられていることがわかります。
良い方向に向かっている分野
良い方向に向かっていると思う分野として、医療・福祉(20.1%)、教育(15.7%)、雇用・労働条件(14.4%)、科学技術(14.2%)が挙げられます。この結果から、医療・福祉(20.1%)などが肯定的な方向性として認識されていることがわかります。
調査の総括
この調査全体を通じて、国民の社会意識として以下のことがわかります。
- 愛国心は過半数が持っているものの「非常に強い」は限定的で、84.4%がその育成を必要と認識しており、伝統的な価値観(治安のよさ、自然、文化)が誇りの基盤となっている。
- 社会貢献意識は高く(62.2%)、環境・福祉・災害援助への関心が強い一方、地域コミュニティのつながりは半数程度で維持されている。
- 世相認識では明るいイメージ(平和・安定)が挙げられるが、暗いイメージ(ゆとり不足・自己中心性)の選択数が多く、社会の不安や分断が懸念されている。
- 社会満足度は53.8%と半数超えるが、不満も45.3%近くあり、特に経済的ゆとりや働きやすさの不足が大きな課題として浮上している。
- 政策面では、国民意見の反映が不十分(71.1%以上)と強く感じられており、政治家の傾聴や国民の関心向上が改善策として期待されている。
全体として、国民は社会や国への関心・貢献意欲を保ちつつ、経済的不安や政策への不信が根強く、平和や文化への誇りを支えにしつつも、より良い社会実現への課題意識が強いことが明らかになりました。
詳細は内閣府の公開資料こちらを参照してください。
※本文中では平均選択数を省略しましたが、資料では複数回答可の質問(例:世相のイメージ、日本の誇り、社会の満足点など)で使用される指標です。平均選択数とは、各選択肢の選択率(%)をすべて合計した値で、回答者1人あたり平均で何個の項目を選んだかを示すものです(例:382.4の場合、1人平均約3.82個)。数値が高いほど、複数の項目に当てはまると感じている人が多いことを意味します。
