日本の家計負債の概要と世界各国の家計負債

日本の家計負債の概要
世界各国の家計負債の概要

日本の家計負債の概要

家計負債とは、一般家庭(個人を含む世帯)が金融機関などから借り入れたお金の総額を指します。主に住宅ローン、自動車ローン、カードローン、教育ローン、消費者金融などから成り、クレジットカードの未払い残高なども含まれます。経済指標としては「家計負債のGDP比(=家計負債総額 ÷ その国のGDP × 100)」で国際比較されることが一般的で、この数値が高いほど「家計部門が借金に依存している」状態と言えます。

日本の家計負債は、主に住宅ローンなどの金融機関からの借入金で構成されており、経済指標としてはGDP比で測定されることが一般的です。2025年6月時点の最新データでは、家計負債のGDP比は約64~65%程度で推移しており、先進国の中では比較的低い水準を維持しています。

GDP比の推移

2024年第4四半期には64.8%だった家計負債GDP比は、2025年第1四半期には64.4%へとわずかに低下しました。長期的には1990年代後半から2000年代前半にかけて上昇したあと、おおむね60%台後半で安定しており、近年は緩やかな低下傾向が見られます。

負債総額の規模

2025年6月時点の家計負債総額は約2兆7620億米ドル(日本円換算で約400兆円前後)です。日本銀行の資金循環統計によると、2025年第2四半期末の家計向け貸出残高は335兆円となり、前年比3.0%増と、増加ペースは前四半期の3.3%からやや鈍化しています。

主な増加要因

近年は低金利環境の継続と住宅需要の堅調さから、住宅ローンを中心に家計負債が増加しています。一方、消費者ローンやカードローンは伸びが鈍く、負債全体の伸びはほぼ住宅ローンによるものです。平均的な家計の負債額は2023年時点で約655万円となっています。

国際比較での位置づけ

日本の家計負債GDP比は、カナダ(約100%)、米国(約69%)、韓国(約93%)と比べるとかなり低く、G7の中でも最も低いグループに属します。欧米諸国のようにクレジットカードや教育ローンによる負債が急増する動きは見られず、負債の大部分が住宅関連である点も特徴です。

今後の見通し

日銀の利上げが徐々に進む中、住宅ローンの金利も上昇傾向にあります。将来的には借入コストの上昇により、家計負債の伸びがさらに鈍化する可能性が高いと考えられます。ただし、急激な金利上昇がなければ、家計全体の債務負担が直ちに危機的な水準に達するリスクは現時点では小さい状況です。

世界各国の家計負債の概要

世界各国の家計負債は、主に住宅ローンや消費者ローンなどの金融機関からの借入を指し、GDP比で測定されることが一般的です。2025年時点で、先進国を中心に高い水準を維持しており、特にカナダやスイス、オーストラリアなどでGDP比100%を超える国が見られます。

グローバルな傾向

先進国では住宅価格の高騰や長期間の低金利が家計負債を押し上げてきました。一方、新興国では金融アクセスが限定的であるため、全体的に低い水準にとどまっています。

家計負債GDP比の高い国々(2025年3月時点)

順位 国名 GDP比 (%)
1 スイス 125.0
2 オーストラリア 113.0
3 カナダ 100.1
4 オランダ 94.0
5 ニュージーランド 90.1
6 韓国 89.5
7 タイ 88.2
8 香港 87.8
9 ノルウェー 87.4
10 デンマーク 84.7

高い負債の要因

上位国ではほぼすべての負債が住宅ローンによるものであり、不動産価格の高止まりと変動金利ローンの普及が背景にあります。金利が上昇すると家計への負担が急速に増大するリスクを抱えています。

家計負債GDP比の低い国々(2025年3月時点)

順位 国名 GDP比 (%)
1 アルゼンチン 5.0
2 トルコ 9.7
3 インドネシア 16.0
4 メキシコ 16.7
5 ハンガリー 17.1
6 ロシア 20.7
7 ポーランド 22.5
8 リトアニア 22.8
9 コロンビア 25.4
10 アイルランド 26.4

主要国の最新データ(2025年3~6月時点)

国名 GDP比 (%)
アメリカ 68.3
中国 60.1
日本 64.4
ドイツ 49.4
イギリス 75.9
フランス 60.2
インド 42.0
ブラジル 36.6

地域別の特徴

欧州では北欧・西欧諸国で高い傾向がある一方、ドイツは比較的低めです。アジアでは韓国が突出しており、日本・中国は中間的な水準にあります。新興国全体では依然として低い国が多く、金融深化の余地が大きい状況です。

家計負債が経済に与える影響と今後の見通し

家計負債が高い国では、金利上昇時に消費が急速に冷え込むリスクがあります。2024~2025年にかけて多くの中央銀行が利上げサイクルを終えたものの、今後再び金融引き締めが必要となった場合、家計部門が最も脆弱なショック吸収体となる可能性があります。一方、負債が低い国では消費余力があるため、景気刺激策がより効果的に機能しやすい特徴があります。