・鈴木農林水産大臣のJA支援政策の概要
・JA組織の税金依存とその問題点
・JA解体の必要性と潜在的な利点
鈴木農林水産大臣のJA支援政策の概要
2025年10月22日に就任した鈴木憲和農林水産大臣は、物価高騰対策として「おこめ券」の配布を最優先課題に掲げています。この施策は低所得世帯向けにコメ購入を補助するもので、政府が重点支援地方交付金(約4000億円規模)を財源に自治体へ強く促す形を取っています。実際の運用では、東京都台東区がJA全農発行のお米ギフト券を、愛知県日進市がJAグループの全国農協関連券を採用するなど、多くの自治体でJAが印刷・発行・流通を担っており、手数料収入が組織に直接還流する仕組みが明確に存在します。JA全中会長もこの政策を「大変ありがたい」と公に支持しており、税金がJAのネットワークを維持・強化する役割を果たしていることは明らかです。
おこめ券の仕組みと税金投入の詳細
おこめ券は自治体が発行主体ですが、紙の券を採用した場合、実務のほぼ全てをJAグループが受託しています。印刷費・配送費・システム手数料などが税金から支払われるため、結果的に公的資金がJAに流入します。2025年11月時点で、デジタルクーポンや現金給付を選択した自治体はごく少数にとどまり、大半はJAルートを活用しており、「自治体の自由」という説明とは裏腹に、JA依存の構造が全国的に広がっています。
コメ政策の全体像とJA依存の背景
鈴木大臣は「需要に応じた生産」を掲げ、前政権の増産路線を事実上撤回しました。就任会見で「コメの小売価格はマーケットで決まるべき」と述べ、政府備蓄米の放出を明確に否定したことで、JAが長年求めてきた生産調整・価格維持路線が復活した形です。この方針転換はJA全中から即座に歓迎されており、石破前首相時代に進んだ「減反減反(減反廃止)」の流れが完全に逆転したことを意味します。農林水産省出身の「生え抜き大臣」である鈴木氏の政策は、結果としてJAの組織的影響力を一段と強めています。
JA組織の税金依存とその問題点
JAは農産物流通、金融、保険を一手に担う巨大組織ですが、その運営基盤の多くを税金に依存しています。減反関連交付金、備蓄米管理費、税制優遇などを合わせると多額の公的支援を受け続けており、2025年農林業センサスでは基幹的農業従事者が前回比25.1%減と激減する一方で、JAの職員数・施設はほとんど減っていません。このアンバランスが、国民負担と農業現場の疲弊を同時に生んでいます。
税金支援の具体例と中抜き構造
減反交付金(水田活用の直接支払交付金)はJA経由で農家に配分されますが、共販手数料・指導事業費等の名目で組織に残り率が高く、農家手取りが目減りする「中抜き」が常態化しています。また農林中央金庫は2024年度に約1兆5000億円の赤字を計上しましたが、金融・保険部門の利益と税制優遇で補填されており、農業部門の赤字を国民全体で穴埋めしている構図が続いています。
JAの非効率性と農家・消費者への影響
JAの集送網は事実上の独占状態にあり、競争原理が働かないため流通コストが高止まりしています。2024~2025年のコメ不足・価格高騰では、猛暑やインバウンド需要も要因でしたが、農水省自身が「流通段階での抱え込み」を指摘し、JAや大手卸が在庫を放出しない状況が価格をさらに押し上げました。結果、2025年11月の小売米価は史上最高値を更新し続け、食料自給率37%という低水準のまま改善が見られません。
JA解体の必要性と潜在的な利点
こうした税金依存と非効率が鈴木大臣の政策でさらに顕在化した今、JAの抜本的改革・解体を真剣に議論すべき時です。2019年の農協法改正でJA全中は一般社団法人化され監査義務化が進みられたものの、実質的な権限は温存されたままです。組織を流通・金融・保険の各事業に分割民営化すれば、以下のような効果が期待できます。
解体による経済・社会的な利点
・年間数兆円規模の税金負担が軽減
・中抜きがなくなり農家手取りが増加
・企業参入が進み、スマート農業や直販が加速
・競争原理が働き、消費者米価が安定
・食料自給率向上への道筋が明確になる
鈴木大臣の政策がJA存続を事実上最優先としている今こそ、国民全体の利益を優先し、JAの解体的改革を進めるべきです。税金を農業現場と消費者に直接届ける仕組みへの転換が、持続可能な日本農業の道であると言えるでしょう。
