日本は「重税国」じゃないの?数字と実感がズレる本当の理由:日本ファクトチェックセンターの検証結果

日本税負担の「数字 vs 実感」:ファクトチェックのモヤモヤを解消する

日本ファクトチェックセンター(JFC)の検証で、「日本は世界一の重税国」という主張が誤りと判定された一方で、「特に税負担が重い国とは言えない」という表現に、多くの方が実感とのギャップを感じるかもしれません。この指摘は、統計データが示す「中位」の位置づけと、現役世代の財布に直撃する負担感のずれを鋭く捉えています。以下では、なぜ数字上は「重くない」のか、そしてなぜ「重い」と感じるのか、そのカラクリを詳しく解説します。

数字上「重くない」根拠:国際比較での中位ポジション

財務省やOECDのデータでは、日本は税・社会保障負担の国際比較で中位に位置づけられます。これにより、「特に重い国とは言えない」という判定は、狭義の統計定義では妥当です。

消費税率の低さ
日本の消費税率は標準10%(2025年現在)で、OECD諸国平均の約19.3%を下回ります。 例えば、ハンガリー(27%)、スウェーデン(25%)、デンマーク(25%)など欧州諸国では20%超が標準です。 このため、消費税単独で見ると、日本は「低負担」側に分類されます。

所得税の最高税率と実効負担
日本の所得税最高税率は45%(住民税含め55%)と高めですが、適用対象は年収4,000万円超の超富裕層に限られます。中間所得層(年収500万円前後)の実効税率は約20-30%で、欧州の高負担国(例: フランスの平均40%超)と比べて抑えられています。OECDの税収構造データでも、日本の中間層負担は中位です。

国民負担率の国際比較
税金と社会保険料を合わせた国民負担率(対国民所得比)は、2025年度見通しで46.2%です。 これはOECD平均(約40-45%)を上回りますが、フランス(約60%)、スウェーデン(約50%)、ドイツ(約50%)に比べて中程度です。 欧州の高福祉国より軽く、米国(約30%)より重い「中負担」ポジションが、JFCの「特に重くない」という評価の基盤となります。

実感とのずれのカラクリ:見落とされがちな3つの要素

しかし、給与明細や家計の「痛み」を振り返ると、負担は決して軽くありません。統計が捉えきれない側面が、現役世代のモヤモヤを生んでいます。

① 社会保険料の急増:実質的な「第二の税金」
給与から引かれる社会保険料(健康保険・厚生年金など)は、2023年のOECDデータで日本はGDP比約15%と高水準です。 ここ数十年、政府は直接税増税の反発を避け、社会保険料を年々引き上げてきました。2025年度の国民負担率46.2%のうち、社会保障分は約18%を占め、税金分(28.2%)を上回る勢いです。 これが「税負担軽め」の印象を覆す、直撃の要因です。

② 潜在的国民負担率:借金の「ツケ」が上位水準
現在の国民負担率に財政赤字(国債発行分)を加えた「潜在的国民負担率」は、2025年度で48.8%の見通しです。 これを国際比較すると、OECD上位の高負担国群に近づき、50%超の水準に迫ります。国債残高(GDP比約250%)が将来の増税圧力となるため、数字上の「中位」が実質的に「重い」負担を隠蔽しているのです。

③ 高負担・低福祉のアンバランス:還元実感の薄さ
日本は中負担ながら、教育・医療・介護の自己負担率が高く(例: 大学授業料平均年100万円超、医療窓口3割)、北欧のような「無料化」還元が少ないのが特徴です。 内閣府の分析でも、日本の高齢者向け社会保障費はGDP比12%超ですが、失業・生活保護などの「一般福祉」は欧州の半分以下です。 これにより、「半分取られるのに、さらに自腹で備える」二重負担が、体感的な重さを増幅させています。

まとめ

JFCの判定は統計上は正しく、「世界一」や「特に重い」は誤りと言えます。しかし、実感を反映した誠実な表現として、「OECD中位の数字に対し、社会保険料増・潜在負担の高さ・福祉還元の薄さが、現役世代の負担を重く感じさせる」と注釈を加えるのが適切です。 結果、「世界一ではないが、決して軽くなく、かなり厳しい」のが日本の現実です。
例えば収入の半分を税金として納めていてもその分、自分達に還元されていると思える社会であれば誰も税金が高いとは思わないわけですから