中古住宅はリフォームして売るべき?それともそのまま?
不動産を売るときに「リフォームしてから売ったほうがいいの?」「それともそのままのほうが得?」と悩む方は非常に多いです。結論から言うと、ほとんどの場合、リフォームせずに売るほうが経済合理性が高いのが現実です。ただし、ケースによってはリフォームしたほうが有利になることもあります。以下で、業界通説や実際の調査事例に基づいて詳しく解説します。
なぜリフォームせずに売るのが有利と言われるのか?
1. リフォーム費用はほぼ100%売却価格に反映されない
不動産業界の通説(住宅流通経営協会の事例集など)によると、リフォーム費用に対する売却価格の上乗せ率は平均で30~50%程度にとどまります。 国土交通省の「建築物リフォーム・リニューアル調査」では市場規模が拡大傾向ですが、売却時の回収率を直接示す統計はありません。
- 例:200万円のリフォーム → 売却価格に反映されるのは60~100万円程度
- つまり、100~140万円は完全に損失となる可能性が高い
特に水回りや内装のフルリフォームでは、この傾向が顕著です。
2. 買い手が自分の好みに合わせたいと考える人が多い
SUUMO「住宅購入・建築検討者調査」によると、中古住宅購入検討者の約7割が「自分好みにリフォームしたい」と回答しています。
売主が選んだキッチンやフローリングの色、設備のグレードが買い手の好みに合わない場合、むしろマイナス評価になるケースも少なくありません。
3. 買取再販業者はリフォーム前提で安く買う
リフォーム済み物件は、不動産会社(買取再販業者)が買い取った後に再度リフォームして販売することが多いため、リフォーム済みだと逆に安く査定される傾向があります。
それでもリフォームしたほうがいいケースとは?
1. 明らかに「汚い」「壊れている」部分がある場合の最小限のリノベーション
- 壁紙の著しいヤニ汚れ・カビ
- 雨漏り跡が天井に広がっている
- トイレや洗面所の便器・洗面ボウルが破損している
- 畳がボロボロで異臭がする
このような場合は、ハウスクリーニング+部分補修(50~150万円程度)で印象が劇的に変わり、売却価格の上昇幅が費用を上回ることが多いです。
2. 築20~30年以内で、競合物件が少ないエリア
同じマンション内でリフォーム済み物件がほとんど出ていない場合、差別化としてフルリフォームが功を奏することがあります。特にファミリー層が多いエリアでは、きれいな内装が即決の決め手になるケースも。
3. 「契約不適合責任」を回避したい場合
2020年の民法改正で個人間売買の契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)は原則2年(契約で短縮可)となりましたが、リフォーム済みにして「現状有姿」ではなく「リフォーム後引渡し」とすることで、設備トラブル等のクレームリスクを大幅に減らせます。
結論:ほとんどの人は「リフォームしない」選択が正解
一般的な中古マンション・戸建てを通常の仲介で売る場合、フルリフォームはほぼ確実に損です。
代わりに効果が高いのは以下の3つです:
- 徹底的なハウスクリーニング(10~30万円)
- ホームステージング(家具配置・小物で生活感を演出、10~50万円)
- 必要な部分だけを最小限補修(壁紙張替え、畳表替え、塗装など)
最終的には、不動産会社の担当者に「このまま売る場合」と「部分リフォームした場合」の査定額を両方もらい、費用対効果を数字で比較するのが一番確実です。
「きれいに見せたい」という気持ちはとてもわかりますが、お金のこともしっかり考えて、賢い売却をしてくださいね。
