・中国国家公務員試験（国考）2026年度の平均倍率98倍
・中国における若年失業率の概要
中国国家公務員試験（国考）2026年度の平均倍率98倍について
2025年10月に発表された2026年度中国国家公務員試験（国考）の最終データによると、資格審査を通過した応募者371.8万人に対し、採用予定枠は約3.8万人で、平均競争倍率は過去最高の98倍（98:1）を記録しました。この数字は、安定した「鉄飯碗」を求める若者の殺到を象徴しており、特に2025年の若年失業率の高止まりと密接に関連しています。
98倍という数字が示す現実
国家公務員局の公式発表に基づき、98倍という倍率は単純計算で合格率約1.02%を意味します。最も人気の中央機関ポジションでは2,000～5,000倍を超える職種も存在する一方、辺境地域や基層職種は10倍未満のところもあり、応募者の集中度が極端に偏っています。
なぜ2026年度が過去最高の98倍になったのか
倍率急上昇の背景には、以下の要因が重なっています。
要因① 若年失業率の高止まり
2025年の16～24歳若年失業率（学生除く）は、8月に18.9%、10月でも17.3%と高水準で推移（国家統計局発表）。特に2025年大学卒業生は過去最多の1,222万人に達し、就職難が深刻化しました。このため、民間企業よりも安定性が圧倒的に高い国家公務員職に若者が殺到しています。
要因② 年齢制限の緩和
2026年度から一部職種で年齢上限が35歳超まで引き上げられたことで、既卒者・転職希望者の応募が大幅に増加。これが応募者総数の急増（前年度比約30万人増）に直結しました。
要因③ 民間セクターの雇用環境悪化
不動産不況、テクノロジー企業のリストラ、教育訓練業の規制強化などにより、民間企業の採用が抑制されています。2025年1～9月の都市部新規雇用は938万人にとどまり、政府目標（1,200万人）を下回る状況です。
過去5年間の平均倍率推移（国家公務員局公式データ）
- 2022年度：約66倍
- 2023年度：約67倍
- 2024年度：約77倍
- 2025年度：約86倍
- 2026年度：98倍（過去最高）
社会への影響
98倍という極端な競争率は、若者の「公務員信仰」をさらに強め、試験対策産業（塾・オンライン講座）は2025年も過去最高の売上を更新しています。一方で、合格できなかった大量の優秀な人材が民間企業に流れる「逆淘汰」現象も指摘されており、長期的な経済活力への懸念も生まれています。
まとめ
2026年度国考の平均98倍という記録的な倍率は、単なる試験の難易度を示す数字ではなく、2025年中国が直面した若年失業率の高止まり（8月18.9%）、過去最多の大学卒業生、民間雇用の縮小という三重苦が重なった結果です。国家公務員局は今後も基層職種の優遇措置を拡大するとしていますが、根本的な雇用構造の改善がなければ、この「98倍時代」はさらに続く可能性が高いと言えます。
中国における若年失業率の概要
中国の若年失業率は、16〜24歳の都市部労働者を対象とした指標で、国家統計局が毎月発表しています。この率は、学生を除外した方法で算出されており、2023年12月以降の基準に基づきます。COVID-19パンデミック以降、経済成長の鈍化、大学卒業生の急増、構造的な雇用ミスマッチにより、若年失業率は上昇傾向を示しています。2025年現在、全体的な都市部失業率は約5.1%で推移する一方、若年層では15%を超える月が多く、社会問題化しています。
統計の定義と方法論
国家統計局によると、若年失業率はILO（国際労働機関）基準に準拠し、「①仕事がない、②仕事に就くことが可能、③過去4週間以内に積極的に求職活動を行っている」という3条件を満たす失業者の割合を基に算出されます。 求職活動をしていない人（例: 「寝そべり族」のように働く意思がなく「非労働力人口」に分類される場合）は、統計上は失業者としてカウントされず、分母・分子から除外されます。2023年6月の21.3%到達後、公表を一時停止し、学生を除外した新基準を導入しました。これにより、データは比較的安定化していますが、農村部や求職放棄者を除外するため、実際の状況を過小評価する可能性があります。データは毎月1回、34万戸のランダム抽出調査により収集され、公式ウェブサイトで公開されます。
2020年から2025年までの推移
若年失業率は、2020年のパンデミック影響で上昇を開始し、2022年以降は景気低迷と卒業生増加によりピークを迎えました。以下は国家統計局の公式データに基づく年次平均値および主要月の推移です。旧基準（学生含む）と新基準（学生除く）の違いを考慮し、2023年12月以降は新基準を適用しています。
年次平均値の概要
国家統計局および国際労働機関（ILO）のモデル推計データから抽出された年次平均値は以下の通りです：
- 2020年：約16.8%（7月時点で16.2%、パンデミックによる経済停滞の影響）
- 2021年：約12.42%（回復期の低下傾向）
- 2022年：約14.81%（5月ピーク18.4%、卒業生増加と規制強化の影響）
- 2023年：約15.75%（5月ピーク20.8%、6月21.3%、新基準導入後12月14.9%）
- 2024年：約16.0%（年間平均、学生除く基準で変動）
- 2025年：約17.0%（10月時点17.3%、8月ピーク18.9%）
これらの数値は、国家統計局の月次報告およびTrading Economicsの集計データに基づきます。 全体失業率（全年齢）は2020-2025年で平均5.11%と安定していますが、若年層の率は3倍以上高く、構造的問題を反映しています。
2025年の月次データ詳細
2025年の若年失業率（16-24歳、学生除く）は、経済低迷と卒業生12.2百万人の流入により変動が激しく、8月に18.9%と2023年12月以降最高を記録しました。以下は国家統計局の発表に基づく主な月次データです：
- 2月：16.9%（前月比上昇、旧正月後の影響）
- 3月：16.5%（低下転換）
- 6月：14.5%（1年ぶり低水準）
- 7月：17.8%（上昇）
- 8月：18.9%（最高値、景気低迷と外部不確実性の影響）
- 9月：17.7%（低下）
- 10月：17.3%（微減、雇用促進策の効果）
これらのデータは、国家統計局の2025年月次プレスリリースから抽出され、インフレ低下（8月CPI -0.4%）や不動産投資減少（前年比-12.9%）と連動しています。25-29歳層の失業率は7.2%（10月）と安定しています。
上昇要因と政府の対応
若年失業率の上昇は、大学卒業生の急増（2025年12.2百万）、テクノロジーセクターの規制強化、COVID-19後の回復遅れ、民間企業の雇用抑制が主因です。国家統計局のデータでは、応募者の70%が新卒者で、ミスマッチが深刻化しています。
政府の雇用促進策
中国政府は2025年半ばに若年雇用支援政策を強化し、職業訓練プログラムの拡大、地方雇用奨励、ギグエコノミー（デリバリーなど）の規制緩和を実施しました。2025年10月のデータで微減が見られるのは、これらの効果によるものです。また、2025年の経済成長目標「約5%」達成に向け、財政・金融支援を強調していますが、輸出圧力と家計需要の低迷が課題です。
社会・経済的影響
若年失業率の高止まりは、消費低迷と社会不安を招き、「鉄飯碗」（安定公務員職）志向を強めています。国家統計局の調査では、雇用実感の「厳しい」回答が57.4%（2025年7-9月）と過去最高で、若者のキャリア選択に影響を与えています。政府は基層（地方）雇用を推進中ですが、全体的な改善には構造改革が必要です。
