中国外務省「日本で中国人への犯罪が多発」発言は完全にデタラメだった 外務省が公式データを公開

中国外務省の「日本での中国人対象犯罪多発」発言の概要

2025年11月26日、中国外務省の毛寧報道官は定例記者会見で、「現在、日本では中国人を対象とした犯罪が多発している」と主張しました。この発言は、日本国内の治安悪化を強調し、中国人に対する安全確保を日本側に求める内容でした。報道官はさらに、「日本の警察が先週、中国人を襲った疑いで5人の容疑者を逮捕した事例」を具体例として挙げています。このような声明は、中国政府が自国民に対し日本への渡航自粛を呼びかける文脈で繰り返し用いられており、両国間の外交摩擦を象徴するものです。

発言の背景とタイミング

この発言は、2025年11月17日頃に中国外務省が最初に同様の主張を公表した後のフォローアップです。中国側は、日本国内の治安不安定を理由に、観光や留学を含む渡航を控えるよう国民に注意喚起を強めています。一方、日本側はこれを「事実無根」と位置づけ、即座に反論を展開しました。

日本の外務省による否定と統計データの公表

これに対し、日本の外務省は2025年11月21日に公式発表を行い、中国側の主張を明確に否定しました。外務省は、警察庁の統計データを基に、日本国内で中国国籍者が被害者となった凶悪犯罪(殺人、強盗、放火)の認知件数を公表し、「今年に入って事件が多発している事実はなく、むしろ減少傾向にある」と強調しています。このデータは、主たる被疑者の国籍が中国である事案も含めたもので、客観性を確保したものです。

直近3年間の認知件数推移

外務省が公表したデータによると、以下の通りです。

殺人 強盗 放火 合計
2023年(通年) 14件 33件 1件 48件
2024年(通年) 14件 20件 1件 35件
2025年(1-10月) 7件 21件 0件 28件

この表から、2025年の殺人件数は前年同期比で半減しており、全体としても多発の兆候は見られません。外務省は、「中国側の指摘は当たらない」と結論づけ、両国間の誤解を解消するための対話を呼びかけています。

中国側の具体例に対する日本側の見解

中国外務省が挙げた「先週の5人逮捕事例」については、全体の統計が減少傾向を示す中で、単発的な事件を「多発」の根拠とするのは不適切であるとの指摘が国内外のメディアや国会議員から相次いでいます。また、自民党の鈴木貴子議員らも、警察庁への確認に基づき「今年の殺人被害は7件で例年の半分」と国会で紹介し、中国側の主張を「事実と異なる」と批判しています。

この発言の影響と今後の展望

この一連のやり取りは、日中関係における情報発信の相違を浮き彫りにしています。中国側の主張が公式統計により事実に基づかないものであることが明らかになったことで、日本国内では中国政府の意図に対する疑念が高まっています。一方、両国は経済・文化交流の深化を望む立場から、こうした誤情報を早期に払拭することが重要です。外務省のデータ公表は、透明性確保の好例として評価されています。