渡邊センス、「松本人志関連の名誉棄損裁判」勝訴も賠償220万円という安すぎる現実

渡邊センス氏の名誉毀損訴訟:講談社に220万円賠償命令

2025年11月25日、東京地方裁判所は、お笑い芸人・渡邊センス氏が週刊誌「FRIDAY」を発行する講談社と同誌編集長を相手取った名誉毀損訴訟で、講談社側に合計220万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を言い渡しました。この訴訟は、松本人志氏の女性問題を報じた一連の記事の中で、渡邊氏が女性を紹介したとする記述が事実無根だったとして提起されたものです。

事件の経緯と判決内容

問題の記事は2024年1月~4月に掲載され、渡邊氏の実名を挙げて「女性を松本氏に紹介した人物」と報じました。渡邊氏はこれにより芸能活動に深刻な支障が生じ、計1100万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めて提訴。約2年にわたる審理の結果、裁判所は記事内容の真実性を認めず、名誉毀損を認定。講談社と編集長に連帯して220万円の支払いと訂正記事の掲載を命じました。

渡邊氏は判決後、自ら作成した「勝訴」のプレートを掲げて喜びを表現しています。

賠償額220万円は「安すぎる」のか?弁護士費用と労力を考える

請求額1100万円に対し認容されたのが220万円(約20%)という結果は、形式的には原告の勝訴ですが、実質的な救済として十分なのか、多くの疑問の声が上がっています。特に、訴訟にかかった費用と労力を考えると、「勝っても手元にほとんど残らない」ケースとして典型例になりつつあります。

実際にかかる弁護士費用

名誉毀損訴訟の弁護士費用は、事案の規模や審理期間に応じて異なりますが、長期化するケースでは着手金・報酬金合わせて300~600万円以上になることも珍しくありません。本件のように約2年を要した訴訟では、成功報酬だけでも賠償額を大幅に上回る可能性が高く、結果として原告の手元に残る金額が極めて少額、あるいはマイナスになることさえありえます。

2年間の時間的・精神的コスト

訴訟には裁判期日への出廷、資料作成、証人尋問への対応など、多大な時間と労力が必要です。さらに、実名で性的スキャンダルに関連づけられたことによる精神的苦痛や、仕事への影響も無視できません。これらの実害に対して220万円という賠償額は、被害の実態に見合っているとは言い難い水準です。

日本の名誉毀損賠償額が低水準である現実

日本の名誉毀損訴訟では、雑誌・週刊誌相手の事案で認容額が100~300万円程度にとどまることが多く、数十年にわたり大きな変化が見られません。この金額水準は、訴訟費用を考慮すると「泣き寝入り防止ライン」にとどまり、積極的な権利行使を促すには不十分との指摘が長年なされています。

渡邊センス氏の勝訴は、報道の真実性について厳格な判断を示した点で大きな意義を持ちます。しかし、同時に「勝訴しても経済的には報われない」という日本の名誉毀損救済の限界を、改めて浮き彫りにした判決とも言えるでしょう。