ロケットナウは完全無料なのに成り立つのか?Uber Eats・出前館との比較

ロケットナウとは

ロケットナウ(Rocket Now)は、韓国を拠点とする大手EC企業クーパン(Coupang)が日本法人CP One Japanを通じて2025年に展開を開始したフードデリバリーサービスです。和食、洋食、ヘルシー料理など幅広いジャンルの料理を、圧倒的な速さと低価格で届けることをコンセプトにしています。最大の特徴は「配達料0円」「サービス料0円」「店舗と完全同価格(一部の店舗)」という業界初の「三つのゼロ」構造で、ユーザーは追加料金を一切気にせず注文できる点にあります。

サービスの歴史と背景

クーパンは韓国で「ロケット配送」と呼ばれる当日・翌日配送でシェアNo.1を獲得した実績を持ち、その物流ノウハウと巨額の資金力を武器に日本市場へ進出。2025年4月頃に東京23区を中心にサービスを開始し、わずか数ヶ月で登録ユーザー数が急増しています。新規ユーザー向けに5,000円分以上のクーポンを配布するなど、初期は徹底的なユーザー獲得戦略を展開しています。

主な機能と利用方法

アプリまたはWebサイトから近隣の提携店舗を検索し、メニューを選択して注文。注文後は専属配達員が店舗から直接届けます。基本配達は完全無料ですが、250円の「優先配達」を選べばさらに5〜7分早く届くオプションもあります。少額注文でも追加料金が発生しないため、コーヒー1杯やおにぎり1個から気軽に注文できる点が日常使いに最適です。

送料・システム料金が無料で、店舗と同価格の理由

ロケットナウが「三つのゼロ」を実現できる最大の理由は、クーパンの潤沢な資金力と「まずシェアを取る」という明確な戦略にあります。サービス開始当初は赤字覚悟でユーザーと店舗を急激に増やし、スケールメリットを得た後に収益化を図るモデルです。これは韓国でクーパンがAmazonを圧倒した際とまったく同じ手法です。

収益モデルはどうなっているのか

無料の裏側にある主な収益源は以下の通りです:

・店舗からの販売手数料(注文金額の約20〜30%程度と推定)

・アプリ内広告・優先表示枠の販売

・優先配達オプション(250円)

・将来的なプレミアム会員制度や金融サービス連携

これらにより、ユーザーには無料を提供しつつ、事業全体では黒字化を目指しています。

なぜ店舗は同価格で参加できるのか

通常のデリバリーサービスでは、店舗が手数料を負担するためメニュー価格を2〜3割高く設定しますが、ロケットナウは「店舗負担を極力抑える」方針を採用。結果、店舗は店頭と同じ価格で出品でき、来店客を逃さずにデリバリーでも売上を伸ばせます。これが店舗側の参加ハードルを劇的に下げ、短期間で数万店舗の加盟を実現しています。

既存サービスが対抗できない本当の理由

ロケットナウのモデルが本格的に成立した場合、Uber Eatsや出前館が価格面で太刀打ちできなくなる最大の要因は「無料が常識化する」点にあります。一度「デリバリー=無料」がユーザーの頭に定着すると、有料サービスに戻すことは極めて困難です。

Uber Eatsとの決定的な差

Uber Eatsは「Uber One」(月額498円)で配達料無料化を図っていますが、基本料金やサービス料は残ります。一方、ロケットナウは会員登録すら不要で完全無料。ユーザーは「わざわざ有料会員になる必要がない」と判断し、日常使いはロケットナウに流れる傾向がすでに顕著です。

出前館が最も苦戦する理由

出前館は長年「送料無料キャンペーン」を繰り返してきましたが、根本的に赤字構造を解消できていません。ロケットナウは最初から無料を前提としたシステム設計で参入しており、後から追随しようとしても資金力とスピードで圧倒されます。実際に2025年以降、出前館のシェアは急速に浸食されつつあります。

結論として、ロケットナウは「無料を当たり前にする」ことで業界のゲームルールを根本から変えようとしており、これが既存プレイヤーにとって最大の脅威となっています。