日本の税金は本当に「高すぎる」のか?
「株で3億円儲けた」「年収5億円の起業家」——そんなニュースを見ると、誰しも羨望の眼差しを向けるでしょう。しかし、その華やかな数字の裏側で、国が一番の「勝ち組」になっていることを忘れてはいけません。株式譲渡益には20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)の税金が、給与所得や事業所得には最高45%(+住民税10%)の累進課税が容赦なくかかります。年収1億円の人の手取りは、単純計算で約5,500万円。残りの半分近くを国庫に納めているのです。
1. 消費税10%——「平等」の名の下に潜む不平等
所得に関係なく一律10%(軽減税率8%の品目もあり)。年収300万円のサラリーマンも、年収3億円の投資家も、同じハンバーガーに110円の税金を払います。表面上は「公平」ですが、低所得者ほど生活費に占める消費税の割合が大きいため、実質的な負担率は高くなります。総務省の家計調査によると、年収200万円未満世帯の消費税負担率は約7.1%、年収1,000万円以上では約2.8%——これが「逆進性」の正体です。
2. 税収は過去最高、でも「恩恵」はどこに?
2024年度の一般会計税収見込みは約73兆円(財務省発表)。過去最高水準です。社会保険料を加えた「国民負担率」は46.1%(2023年度)。北欧諸国(デンマーク47.1%、スウェーデン42.3%)と比べても遜色ありません。しかし、受け取るサービスに大きなギャップが——
- 子育て支援:待機児童は減ったが、保育料は所得に応じて高額。無償化は3〜5歳に限られ、0〜2歳はフルタイム共働きでも月7万円超の保育園も。
- 医療:70歳未満の自己負担3割は変わらず。高額療養費制度はあるが、月10万円超の医療費は珍しくない。
- 年金:65歳受給開始でも、平均月額14.4万円(厚生年金)。生活保護水準(単身13万円)と大差なし。
3. 少子化対策の「致命的なズレ」——子どもがいる家庭を助けても、子どもは増えない
政府は「異次元の少子化対策」を掲げ、2028年度までに年間3.6兆円を投じると宣言。しかし、子どもがいる家庭への支援拡大が、出生率を上げるわけではないのが現実です。内閣府の意識調査(2023年)では、「結婚しない理由」のトップは「経済的不安」(約35%)。「子どもを作らない理由」も「子育て費用」(約40%)が最多。すでに子どもがいる家庭に給付金を増やしても、「そもそも結婚・出産を諦めた層」には届きません。
根本原因は「将来への不安」——非正規雇用の増加(若年層の約4割)、実質賃金の20年連続低下、住宅価格の高騰(首都圏新築マンション平均7,000万円超)。「今すら生活が苦しい」のに、18年間で2,000万円以上かかる子育てを想像できるはずがありません。政府の対策は「子どもがいる家庭への補助」ではなく、「子どもを作りたくなる社会の土台作り」にこそ注力すべきです。
4. 「税金の使い道」が見えない根本原因
問題は金額ではなく、使途の不透明さと優先順位のズレです。
| 項目 | 2024年度予算額 | 国民の実感 |
|---|---|---|
| 社会保障 | 37.0兆円 | 高齢者偏重、若者世代は「払うだけ」 |
| 公共事業 | 6.9兆円 | 地方の「箱物」優先、都市部の交通渋滞は放置 |
| 防衛費 | 7.9兆円 | 必要だが、増税前に議論不足 |
| 少子化対策 | 約3.6兆円(2028年度予定) | 「子ども手当」増額でも出生率1.3未満 |
例えば、子ども・子育て支援金(2026年度導入予定)では、月500円の保険料負担増で「実質増税」と批判殺到。肝心の支援内容は「保育士配置基準の緩和」など、現場の声とは乖離しています。
税金を「払う」から「投資する」意識へ
日本の税金は確かに高い。しかし、北欧並みの負担なら、北欧並みの「未来への投資」があって然るべき。社会生活の上で税金が必要なのは誰もが認めるところで、払う事に対して疑問を持っている人は少ないはずです。ただ、その対価として、「払った税金が、10年後の自分の生活を確実に良くする」という信頼が必要です。特に、「子どもを作りたくなる社会」を作るには、子ども手当の増額ではなく、「結婚・出産を諦めさせる不安の除去」が急務。国が一番稼いでいるなら、国民が一番「得をする」仕組みを、今こそ作るべき時です。
