自動車通勤手当の非課税限度額が引き上げ!電車・マイカーの課税ルールを徹底解説

自動車通勤手当の非課税限度額引き上げを決定
通勤手当の課税ルール:電車と自動車の違いを徹底解説

自動車通勤手当の非課税限度額引き上げを決定

2025年11月12日、NHKニュースが報じたところによると、日本政府は勤務先から支給される自動車通勤手当について、所得税が非課税となる限度額を引き上げる方針を固めました。この決定は、物価の上昇、特にガソリン価格の高騰を背景に、マイカー通勤者の負担軽減を目的としたものです。現行の非課税限度額は2014年以来据え置かれていましたが、今回の見直しにより、11年ぶりの改正となります。

改正の背景と目的

近年、ガソリン価格は全国平均で184.1円/L(2025年3月時点の資源エネルギー庁調査)に達し、10年前の139.3円/Lから約1.3倍に上昇しています。この間、非課税限度額が変更されなかったため、通勤者の実質負担が増大していました。政府はこの状況を踏まえ、所得税法施行令第20条の2を改正し、通勤手当の非課税枠を拡大することで、従業員の生活支援を図る方針です。NHKの報道では、この措置が物価高対策の一環として位置づけられていると指摘されています。

改正内容の詳細

非課税限度額は、通勤距離に応じた8つの区分で定められており、最高額は月3万1600円です。今回の引き上げでは、各区分の金額が200円から7,100円程度増加します。また、新たに「65km以上〜100km以上」の距離区分が追加され、非課税限度額の最大額が66,400円に引き上げられます。さらに、駐車場利用費に対する手当の新設も検討されており、通勤者の多様なニーズに対応します。これらの変更は、2025年4月1日以降の措置として適用される予定で、遡及適用が見込まれています。

企業と従業員への影響

企業側では、就業規則や給与規定の改正が必要となります。特に、非課税限度額を上限とする支給規定がある場合、速やかな見直しが求められます。一方、従業員にとっては、通勤手当の非課税拡大により手取り額が増え、定着率向上につながる可能性があります。NHK報道では、この施策が「第3の賃上げ」として、賃金引き上げ政策の補完役を果たすと評価されています。

今後のスケジュールと関連情報

人事院勧告(2025年8月7日)に基づく閣議決定が基盤となっています。詳細は国税庁の公式サイト(通勤手当の非課税限度額の改正について)で確認可能です。企業は年末調整や源泉徴収票の対応を念頭に、早めの準備を進めることが推奨されます。

通勤手当の課税ルール:電車と自動車の違いを徹底解説

通勤手当は、従業員が会社から支給される通勤にかかる費用を補填する手当ですが、所得税法上、その全額が非課税となるわけではありません。特に、公共交通機関(電車・バスなど)とマイカー(自動車・自転車)の利用では、非課税扱いの条件が大きく異なります。以下、国税庁の「通勤手当の非課税の取扱い」(所得税法施行令第20条の2)に基づき、正確に解説します。

公共交通機関(電車・バス)利用の場合:全額非課税

電車やバスなどの公共交通機関を利用して通勤する場合、会社が支給する通勤手当は、合理的な金額の範囲内であれば全額が非課税となります(所得税法第9条第1項第5号)。合理的な金額とは、実際に購入した定期券の価格や、1か月あたりの実費相当額を指します。

  • :定期券代が月額25,000円の場合 → 全額非課税
  • 注意点:定期券代を超える金額を支給した場合、超過分は給与として課税対象

この制度は、公共交通機関の利用促進と、通勤負担の軽減を目的として設けられています。国税庁の通達(所基通9-7)でも、「通常必要と認められる金額」として実費相当額が非課税と明記されています。

マイカー・自転車利用の場合:限度額まで非課税

自動車や自転車で通勤する場合、通勤手当は「片道の通勤距離に応じた非課税限度額まで」が非課税となります(所得税法施行令第20条の2)。限度額を超える支給分は、給与として所得税の課税対象です。

2025年4月1日以降の改正後の限度額(一部抜粋)は以下のとおりです:

片道通勤距離 非課税限度額(月額)
2km未満 全額課税
2km以上10km未満 4,200円
10km以上15km未満 7,100円
55km以上60km未満 31,600円
100km以上 66,400円(2026年4月〜)

この限度額は、ガソリン代・高速料金・駐車場代などを総合的に考慮して設定されており、実費補填ではなく「みなし額」として扱われます。

なぜマイカー通勤手当は全額非課税にならないのか?

公共交通機関と異なり、マイカー通勤手当が全額非課税とならない主な理由は以下の2点です:

  1. 実費の把握が困難

    公共交通機関は定期券代という明確な実費が存在しますが、マイカーの場合はガソリン代・減価償却費・保険料など、個々の車両や運転状況により実費が大きく異なります。実費を個別に精査することは行政・企業双方に過大な負担を強いるため、距離に応じた一律の限度額が採用されています。

  2. 私的利用との区別が困難

    マイカーは通勤以外にも私的利用されるため、支給された手当が「通勤専用」であることを証明することが困難です。このため、過度な非課税優遇を防ぐ観点から、限度額が設定されています(国税庁「通勤手当の非課税の取扱いについて」参照)。

なお、自転車通勤も自動車と同等の限度額が適用されますが、2km未満の場合は全額課税となる点に注意が必要です。

企業実務における注意点

企業は、従業員の通勤手段・距離を正確に把握し、就業規則や給与規程に非課税限度額を明記する必要があります。また、マイカー通勤者の場合、距離区分の変更(例:転居による距離変更)があった際は、速やかに支給額を見直さなければなりません。限度額を超える支給は給与扱いとなり、社会保険料の算定基礎にも影響します。