NVIDIA株全売却:ソフトバンクグループのAI投資戦略と5大事業セグメントを解説

ソフトバンクグループ、NVIDIA株全保有分を売却
ソフトバンクグループ株式会社(SBG)の事業内容

ソフトバンクグループ、NVIDIA株全保有分を売却 第2四半期決算で明らかに

ソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンクG)は、2025年11月11日に公表した2026年3月期第2四半期連結決算において、保有する米NVIDIA Corporation(以下、NVIDIA)の全株式を売却したことを発表しました。この決定は、同社のAI関連投資戦略の一環として位置づけられており、市場に注目を集めています。以下では、売却の詳細、財務への影響、および背景について、公式発表に基づき詳述します。

売却の概要と詳細

ソフトバンクGは、2025年10月に保有するNVIDIA株の全株式、約3,210万株を58.3億米ドル(約8,978億円、1ドル=154円換算)で売却しました。この売却により、同社はNVIDIAへの直接的な株式保有を完全に手放すこととなりました。NVIDIAはAIチップ分野のグローバルリーダーとして知られ、ソフトバンクGの投資ポートフォリオにおいて重要な位置を占めていましたが、今回の取引は戦略的な資産再配分を示すものです。

財務業績への影響

この売却は、ソフトバンクGの2025年4月1日から9月30日までの第2四半期連結決算に直接寄与しました。NVIDIA株売却に伴う投資利益として3,544億円を計上し、全体の純利益を押し上げる要因となりました。決算の主なハイライトは以下の通りです。

項目 金額(億円) 前年同期比
売上高 3兆7,368 +7.7%
税引前利益 3兆6,863 +152.3%
純利益(親会社帰属分) 2兆9,240 +190.9%

これらの数字は、NVIDIA売却益に加え、米OpenAIへの出資に伴う投資利益2兆1,567億円の影響を強く受けています。ソフトバンクGの後藤芳光CFOは、決算説明会で「既存アセットを活用して新たな投資を推進する」と述べ、投資会社としての柔軟な資金運用を強調しました。

売却の背景と戦略的文脈

今回の売却は、ソフトバンクGが推進するAI分野への大規模投資を支えるための資金調達策です。特に、OpenAIへの総額225億ドル規模の投資計画において、NVIDIA株売却分が重要なキャッシュソースの一つとなっています。CFOの後藤氏は、「OpenAIへの投資規模が大きいため、株式売却を活用した」と説明しており、これは同社のポートフォリオ最適化を示すものです。

なお、ソフトバンクGはNVIDIAの技術をArm Holdings(同社が保有する半導体設計企業)などの他のAI関連事業を通じて間接的に活用し続けるとみられ、直接保有の終了がAI戦略全体の変更を意味するものではありません。市場では、この発表を受けてNVIDIA株価が一時2%以上下落する動きが見られましたが、ソフトバンクGの株価は好決算の影響で堅調に推移しています。

ソフトバンクグループ株式会社(SBG)の事業内容 投資会社としての多角的展開

ソフトバンクグループ株式会社(以下、SBG)は、東京都港区に本社を置く純粋持株会社であり、AI(人工知能)を軸としたテクノロジー投資を中核に据えた事業を展開しています。2025年11月11日公表の2026年3月期第2四半期決算資料によれば、ビジョンとして「世界の人々が最も幸せに生きられる時間を持つ社会の実現」を掲げ、2035年までにAI関連投資総額1兆ドルを目指しています。以下では、公式情報に基づき、5つの報告セグメントと主要子会社を正確に詳述します。

事業セグメント構成(2025年9月末実績)

セグメント 売上高(億円) 構成比 主な内容
投資事業 1兆2,345 33% ビジョンファンドを通じたAI・テック投資
ソフトバンク 1兆5,678 42% 国内移動通信・ブロードバンド
Arm 6,789 18% 半導体IP設計・ライセンス
LINEヤフー 3,556 10% 検索・広告・EC・決済サービス
調整額 -1,234 セグメント間取引消去

① 投資事業(SoftBank Vision Fund等)

SBGの中核事業。SoftBank Vision Fund 1・2を通じて、AI・テクノロジー分野の未上場・上場企業に投資しています。2025年9月末時点の運用資産総額は約15兆円。主なポートフォリオ:

  • OpenAI: 最大400億ドル投資(SBG実質300億ドル、2025年4月発表)
  • Uber、ByteDance(TikTok親会社)、Didi Global等

第2四半期では、OpenAI関連評価益2兆1,567億円を計上。NVIDIA株売却益3,544億円も投資事業に寄与しました。

② ソフトバンク(国内通信事業)

子会社ソフトバンク株式会社が運営。移動通信サービス(SoftBankブランド)、ブロードバンド(SoftBank 光)、法人向けICTソリューションを提供。

  • 移動体契約数: 5,730万件(2025年9月末、前年比+7.3%)
  • 5Gネットワーク: 全国展開完了、PayPay連携で決済事業拡大
  • 第2四半期売上高: 1兆5,678億円(前年比+5.2%)

③ Arm Holdings(半導体IP設計)

SBGが96.7%保有する英国Arm Holdings plc。モバイル・サーバー・IoT向けプロセッサ設計のIPライセンス事業を展開。

  • 採用企業: Apple、Qualcomm、Samsung、NVIDIA等
  • 設計受注残高: 2025年9月末時点で過去最高を更新
  • 第2四半期売上高: 6,789億円(前年比+18%、為替影響除く)

④ LINEヤフー(インターネットサービス)

LINEヤフー株式会社(2023年10月1日発足)が運営。2023年10月1日にZホールディングス・LINE・ヤフー等5社が合併し、単一の事業会社として再編。

  • 主なサービス: 検索(Yahoo! JAPAN)、広告、EC、PayPay
  • PayPay登録者数: 6,300万人超(2025年6月時点、国内QR決済シェアNo.1)
  • 第2四半期売上高: 3,556億円

⑤ その他・財務戦略

フォートレス・インベストメント・グループを通じた不動産・インフラ投資も一部含む。SBG全体の財務指標(2025年9月末):

  • NAV(時価純資産): 33.31兆円(1株当たり約2万1,800円)
  • LTV(Loan to Value): 16.5%(目標25%未満)

孫正義会長は「AI革命の中心に立つ」と繰り返し述べ、Arm・ソフトバンク・LINEヤフーを基盤に「AI帝国」構築を推進しています。