・10代のネット賭博依存
・プロバイダーによるアクセス制限の必要性
・国営オンラインカジノ運営という選択肢
10代のネット賭博依存と中高生の摘発相次ぐ現状
2025年11月9日付の読売新聞報道によると、オンラインカジノを利用したネット賭博に10代の若者が染まり、中高生を含む未成年者の摘発が相次いでいます。例えば、千葉県警は4月に浜松市の男子高校生を単純賭博容疑で書類送検した事例があります。未成年者は親の名義や成人のアカウントを購入して年齢制限を回避しているケースが多くあります。また、賭け金の入手のためにロマンス詐欺などの犯罪に手を染める事例も報告されており、若者のギャンブル依存症リスクが高まっています。
改正ギャンブル等依存症対策基本法の施行と広告削除要請
この問題に対応するため、2025年6月18日に改正ギャンブル等依存症対策基本法が成立し、6月25日に公布、9月頃に施行されました。同改正法は、オンラインカジノサイトの開設・運営や、SNS・まとめサイトなどによる誘導広告を明確に違法とし、罰則はないものの違法性を明記することで削除を促進する内容です。警察庁はインターネット・ホットラインセンターを通じて、誘導投稿を「違法情報」としてプラットフォーム事業者に削除要請する方針を固め、運用ガイドラインを改定しました。これにより、広告や投稿の削除が進みやすくなりました。
広告削除だけでは根本解決に至らない理由
しかし、改正法施行後も広告削除要請だけでは根本的な解決に至っていません。オンラインカジノサイトの大元が海外で運営されており、日本の法律が直接適用できないためです。サイト本体が存在し続ける限り、新たな広告や誘導サイトが次々と登場する構造が変わらず、利用者のアクセスを完全に防げないのが実情です。
アフィリエイト広告が若者を深みにはめる悪質な仕組み
特に問題なのは、SNSやまとめサイトに溢れるアフィリエイト広告です。多くのオンラインカジノでは、紹介者が登録・入金・プレイをさせることで報酬を得る「レベニューシェア方式」を採用しています。これは、紹介した利用者が負ければ負けるほど、紹介者に継続的に収入が入る仕組みです。つまり、広告主は「あなたが長く遊び続けて大損するほど儲かる」構造になっているのです。若者は「簡単に稼げる」「勝てる」と誘われても、続ければ続けるほど負けるのが数学的な必然であることを認識する必要があります。この仕組みを知らずに「友達が儲けた」と聞いて始めると、取り返そうとする依存のスパイラルに陥りやすくなっています。
海外運営サイトへの対策としてプロバイダーによるアクセス制限の必要性
海外運営のカジノサイトが公開されている以上、日本の法律適用が難しい状況で、効果的な抑止策としてインターネットサービスプロバイダー(ISP)によるサイトへのアクセス制限(ブロッキング)が検討されています。総務省は2025年4月から「オンラインカジノに係るアクセス抑止の在り方に関する検討会」を開催し、ブロッキングを含む法的・技術的課題を議論中です。政府はライセンス発行国への日本向けサービス停止要請やジオブロッキングも進めていますが、運営者の収益考慮で応じないケースが多く、国内プロバイダーによる強制遮断が実効性のある方法として浮上しています。
ブロッキング実施の課題と現状
ブロッキングは、児童ポルノサイトで例外的に認められていますが、オンラインカジノでは憲法の「通信の秘密」侵害やオーバーブロッキング(無関係サイトの誤遮断)の懸念から慎重論が強いです。VPNによる回避可能性や運用コストも指摘されています。過去の海賊版サイト対策同様、制度整備が頓挫した前例があり、2025年11月時点でブロッキングは実施されていません。支払いブロッキング(決済遮断)との併用も海外事例で有効とされていますが、日本ではアクセス制限が主な議論対象です。大元サイトへの直接アクセスを防ぐプロバイダー制限が、広告対策を超えた現実的な解決策として位置づけられています。
需要がある以上、国営オンラインカジノ運営という選択肢
海外サイトを完全に遮断することが難しい現実がある一方で、オンラインカジノに対する国内の需要は確実に存在しています。この状況を踏まえ、「いっそのこと競馬や競輪、パチンコが合法であるわけですから、国や公的機関がオンラインカジノを運営してはどうか」という提案が一部で浮上しています。
国営運営のメリットと海外事例
国営・公営にすれば、収益を依存症対策や青少年支援に還元できます。また、厳格な本人確認と年齢制限、1日あたりの賭け金上限設定、自己排除プログラムの義務化などが可能です。実際、フィンランドでは国営企業Veikkausがオンラインカジノを独占運営し、利益を社会福祉に充てています。スウェーデンも国営背景のSvenska Spelがオンラインギャンブルを管理し、依存症対策に力を入れています。これらの国では、違法サイトへの流入が抑えられ、利用者の保護が進んでいます。
日本での実現可能性と課題
日本ではIR整備法でランドカジノは認められていますが、オンラインカジノは現在も刑法の賭博罪に抵触するため、国営運営には法改正が必要です。公営ギャンブル(競馬・競輪・競艇・オートレース)は地方自治体や特殊法人による運営が認められている特例措置であり、同様の枠組みでオンラインカジノを位置づける議論が今後出てくる可能性があります。ただし、「ギャンブルを国が推奨する」という批判や、依存症増加への懸念は避けられません。それでも、海外の違法サイトにお金を流出させるよりは、国内で管理し、依存症対策予算を確保する方が現実的だとする意見もあります。
結論:遮断か管理か、二者択一の議論へ
現時点ではプロバイダーによるアクセス制限が主な対策として議論されていますが、需要がなくならない以上、「遮断するだけ」ではなく「安全に管理する」選択肢も併せて検討する時期に来ています。国営オンラインカジノは一つの抜本的な解決策となり得るでしょう。いずれにせよ、若者が犯罪に巻き込まれないための早急な対策が求められています。
