・三菱自動車、2025年9月中間決算は92億円の最終赤字に転落
・自動車業界の2025年9月中間決算まとめ
三菱自動車、2025年9月中間決算は92億円の最終赤字に転落
三菱自動車工業は2025年11月5日、2025年9月中間決算(2025年4〜9月期連結)を発表しました。最終損益は92億円の赤字(前年同期は379億円の黒字)となり、中間期として5年ぶりの赤字転落となりました。本業のもうけを示す営業利益も前年同期比81%減の172億円と大幅に悪化しています。
主な赤字要因:トランプ政権の高関税政策が直撃
最大の要因は、米国トランプ政権による自動車輸入関税の引き上げです。メキシコなどからの輸入車に対する高関税が利益を圧迫し、影響額は数百億円規模に上るとみられます。また、主力市場の東南アジアでの販売不振も重なり、全体の販売台数は前年割れとなりました。
為替変動とバーツ高でタイ工場を無期限休止
円安メリットが縮小する一方、タイバーツの高騰が生産コストを急上昇させました。これを受け、三菱自動車はタイ国内の完成車工場を2025年末までに無期限休止することを決定。ピックアップトラック「トライトン」の生産をインドネシアへ移管し、コスト構造の抜本改革に踏み切ります。
通期見通しは下方修正、厳しい事業環境が継続
三菱自動車は2026年3月期通期予想を下方修正。営業利益を従来の1,000億円から700億円に引き下げました。関税リスクや為替変動を織り込み、構造改革費用も追加で計上する方針です。一方で、EV・PHVの新型車投入や日産・ルノーとのアライアンス強化で巻き返しを図ります。
投資家へのメッセージ
「厳しい外部環境の中、コスト削減と生産最適化を加速させる」——加藤隆雄社長は決算会見でこう強調。株価は発表後に一時5%超の下落となりましたが、長期的な収益体質強化への期待も残されています。
自動車業界の2025年9月中間決算まとめ:トヨタ・日産・ホンダ・マツダなど日本勢、関税&中国不振で明暗
2025年11月上旬、国内主要自動車メーカーの2025年9月中間決算(2025年4~9月期)が出揃いました。米トランプ政権の高関税、中国EV競争激化、円安一服が直撃し、7社中5社が最終減益。トヨタとホンダは過去最高売上を更新したものの、利益は圧縮。日産・三菱は巨額赤字に沈みました。
トヨタ自動車:営業利益18.6%減の2兆56億円 中間減益も通期は上方修正
売上収益は過去最高の23兆3997億円(前年比4.9%増)。ハイブリッド車好調で北米・アジアが牽引。営業利益は関税影響と販売費用増で2兆56億円(18.6%減)。最終利益は1兆4329億円(20.8%減)。通期は売上47兆5000億円、営業利益4兆5000億円に上方修正。
日産自動車:純損益2300億円赤字 通期営業赤字2750億円見通し
売上収益6兆1431億円(0.8%減)。米国販売不振と中国苦戦で販売台数3.7%減。営業損益は中間で150億円の黒字(前年比98.4%減)も、関税影響を織り込み通期は営業赤字2750億円、純損益2300億円赤字に下方修正。構造改革で2000億円の固定費削減を急ぐ。
ホンダ(本田技研工業):営業利益6.6%増の7426億円 最終利益は19.7%減
売上収益10兆8786億円(6.6%増)と過去最高。2輪事業がアジアで好調。4輪は中国販売減で営業利益7426億円(6.6%増)も、最終利益は中国子会社評価損で4947億円(19.7%減)。通期売上は7000億円上方修正も、最終利益は500億円下方修正の2500億円に。
マツダ:営業利益20.5%減の1030億円 最終利益67.3%減の353億円
売上高2兆3939億円(3.3%増)と過去最高。北米CX-70/90が寄与。営業利益は関税・販売費用増で1030億円(20.5%減)、最終利益は為替デリバティブ評価損で353億円(67.3%減)。通期は売上5兆2000億円(前期比2.0%増)も、営業利益1500億円(39.5%減)と大幅減益見通し。
共通の逆風:①米25%関税 ②中国EV価格競争 ③円安一服
トランプ政権の自動車輸入25%関税で、各社通期に数百億~数千億円の影響。トヨタは「現地生産比率80%超で影響限定」、日産は「メキシコ生産車直撃」。中国ではBYDなど現地勢の値下げ攻勢でシェア縮小。円安メリットは150円→142円で縮小。
社長コメント 「構造改革と現地生産加速」
- トヨタ・佐藤恒治社長:「関税影響は限定的。マルチパスウェイで対応」
- 日産・内田誠社長:「2000億円固定費削減、2027年度黒字化」
- ホンダ・三部敏宏社長:「中国事業の抜本見直し」
- マツダ・毛籠勝弘社長:「ライトアセット戦略で資本効率30%向上」
投資家へのポイント
短期:関税リスクで株価は一時5~10%下落
中期:現地生産シフトとコスト削減の実行力がカギ
長期:EV・PHV新型車投入とアライアンス強化で巻き返し
