・立憲・野田代表の「比例だけ削減は大政党のエゴ」発言の背景
・民主党政権時代の議員定数削減公約
・「結局やる気がなかっただけ」:民主党の公約不履行をめぐる批判
立憲・野田代表の「比例だけ削減は大政党のエゴ」発言の背景
2025年10月25日、立憲民主党の野田佳彦代表は静岡県内での講演で、日本維新の会が主張し自民党と合意した国会議員の定数削減案について、「比例区だけ削るのは大きな政党のエゴだ」と強く批判しました。この発言は、現在の自民・維新連立政権下での政治改革議論をめぐるもので、野田代表は比例代表制度が中小政党や少数意見の代表を支える重要な役割を果たしている点を強調。単に比例定数を減らすだけでは、大政党の利益を優先し、多様な民意を損なうと指摘しています。このような野田代表の立場は、過去の民主党政権時代に自らが深く関わった議員定数削減の経験に基づくものであり、当時の公約実現の失敗を振り返る上で象徴的です。
発言の文脈:自民・維新の定数削減案とは
自民党と日本維新の会は、連立政権樹立に向けた政策協議で、国会議員の定数を1割削減する「身を切る改革」を「絶対条件」と位置づけました。特に、衆議院の比例代表定数を50議席程度削減する方向で合意が進んでいます。この案は、維新の公約として長年掲げられてきたもので、税金の無駄を減らすという観点から支持を集めています。しかし、野田代表はこれを「比例だけに焦点を当てるのは不均衡」とし、選挙制度全体のバランスを考慮すべきだと主張。比例制度が小政党の存続を支え、民主主義の多様性を確保しているため、削減は中小政党の「死活問題」になるとの懸念を表明しました。
野田代表の過去の経験:民主党時代からの定数削減「悲願」
野田佳彦氏は、民主党政権時代(2009-2012年)から議員定数削減を「悲願」と位置づけ、積極的に推進してきました。2012年当時、財務大臣を務めていた野田氏は、財政再建の観点から国会議員の数を減らす必要性を繰り返し訴え、自民党の安倍晋三氏(当時野党総裁)に対しても「約束覚えているか」と公約履行を迫る発言をしています。立憲民主党の公式発信でも、野田氏のこの姿勢は「悲願」として強調されており、最近の党内でも定数削減を推進する声が上がっていますが、一方で党内から「少数意見の尊重」を求める反対論も出ています。
民主党政権時代の議員定数削減公約:掲げながら進まなかった経緯
民主党は2009年の衆院選マニフェストで、国会議員の定数削減を明確に公約に掲げました。特に、衆議院の比例代表定数を大幅に減らす「身を切る改革」を打ち出し、国民の政治不信を払拭する目玉政策としてアピール。政権獲得後、2012年6月には当時の野田内閣が、衆院定数を当時の480から45削減する具体案を野党に提示しました。この案は、比例11ブロックを廃止して全国比例に改める制度改革を含み、財政負担軽減と選挙の効率化を狙ったものでした。しかし、この公約は結局、実現に至らずに終わりました。野田代表自身が後年、「私はだまされた」と自民党との協議の難しさを振り返るほど、民主党政権の最大の「未完の公約」として残っています。
公約の詳細:2009年マニフェストと2012年の具体案
民主党の2009年マニフェストでは、「国会議員の定数・報酬を2割削減する」と明記され、比例定数の削減が中心でした。政権発足後、2011-2012年の国会では、衆院比例定数を80議席削減する法案の検討が進められましたが、党内調整や野党との合意形成が難航。2012年6月の案では、比例ブロックの再編により45議席減を実現しようとしましたが、解散総選挙のタイミングで棚上げとなりました。この時期、民主党は東日本大震災の復興や消費税増税の議論に追られ、定数削減は後回しにされたのです。
進まなかった主な理由:党内対立と政治的優先順位のずれ
民主党政権下で定数削減が進まなかった理由は多岐にわたりますが、最大のものは党内対立です。比例定数の削減は、民主党内の比例当選議員にとって自身の議席を脅かすもので、鳩山由紀夫元首相らリベラル派を中心に強い抵抗がありました。また、野党(自民・公明)との協議では、「定数是正を先行させる」という野田総理(当時)の約束が守られず、党首討論で安倍氏から「たがえるのか」と追及される事態に。さらに、2012年の衆院解散・総選挙を控え、政権維持を優先した結果、定数削減法案の成立が見送られました。震災復興予算の確保や社会保障・税一体改革の推進が政治日程を圧迫し、改革の機運が失速したのです。
「結局やる気がなかっただけ」:民主党の公約不履行をめぐる批判
野田代表の最近の発言をめぐり、ネット上やメディアでは「民主党時代に自らが掲げた公約を果たせなかったのは、やる気がなかったからではないか」という厳しい声が上がっています。確かに、民主党は政権獲得時の高揚感から定数削減を「悲願」と喧伝しながら、実行力に欠けました。野田氏自身が財務大臣として財政規律を訴えていたにもかかわらず、内閣総理大臣に就任した2012年以降は、消費税増税の党内調整すら難航する中で、定数削減を「えいや」で決めるような強引さを見せられませんでした。これは、単なる「野党との合意難航」ではなく、政権与党としての責任感の欠如、つまり「やる気」の問題として批判される要因です。結果として、2012年総選挙での民主党大敗は、こうした公約不履行が国民の失望を招いた一因とも指摘されています。
批判の根拠:野田氏の「だまされた」発言と党内実態
野田代表は維新の定数削減案に対し、「経験から言うと、自民党は約束しても信用できない」と述べていますが、これは民主党政権時の自民党との党首会談での「裏切り」を指すものです。しかし、民主党内部でも比例削減に反対する声が強く、野田氏の「悲願」が党全体の合意を得られなかった点が浮き彫り。2011年の比例定数80削減案は、民主党比例議員の反発で法案化すら進まず、結局「公約倒れ」に終わりました。この経緯から、「やる気があったなら党内をまとめ、野党協議を粘り強く進めたはず」との指摘が、野田氏の現発言に対するカウンターとして広がっています。
現在の示唆:野田氏の矛盾
野田代表の「比例だけ削減はエゴ」発言は、民主党時代の公約不履行の教訓を踏まえ、「小選挙区と比例のバランスを保つ削減」を求めるものですが、世論からは「難癖」との批判が上がっています。野田氏は定数削減を「悲願」としながら、維新の比例50議席削減案に反対し、「民意の均衡」を理由に具体的な代替案を示さない姿勢が、「本気で削減する気がない」「立憲の議席を守る言い訳」と見られています。立憲民主党の2025年公約集に定数削減が明記されていないことも、野田氏の主張が党の方針と乖離しているとの批判を招き、党として削減に賛成するか反対するかの統一見解を打ち出せない状況です。削減が本命なら維新案に妥協し、小選挙区を含む削減案を提示する余地はあるものの、党内反対派や野党連携の崩壊リスクから、野田氏は慎重姿勢を崩していません。このため、党の結束は「比例削減反対」の方向でまとまる可能性が高いものの、野田氏の「悲願」との整合性が課題となり、立憲の主導力と信頼性が問われる局面です。
