アサヒグループのシステム障害で小売店・飲食店への配送遅延、新商品の発売も延期

アサヒグループのシステム障害概要

2025年9月29日朝、アサヒグループホールディングス(以下、アサヒグループHD)は、サイバー攻撃の影響により大規模なシステム障害が発生したと発表しました。この障害は、グループの国内事業に深刻な影響を及ぼしており、発生から3日以上経過した10月1日現在も復旧の見通しが立っていません。主に受注・出荷システムが停止し、ビールや飲料、食品などの商品供給が滞る事態となっています。さらに、障害の影響で10月発売予定だった計12品目の新商品の発売が延期されることとなり、マーケティング活動にも打撃を与えています。

アサヒグループ食品新商品発売延期のお知らせ
アサヒ飲料新商品発売延期のお知らせ

障害発生の経緯と原因

障害は9月29日午前7時頃に発覚し、サイバー攻撃によるものと特定されました。10月1日時点で、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の被害であることが捜査当局に報告されています。攻撃の詳細は現在調査中ですが、システムの暗号化や業務停止を狙った攻撃とみられています。アサヒグループHDの公式発表によると、システム障害の範囲は国内に限定されており、海外事業への影響は確認されていません。現時点で個人情報や顧客データの外部流出はなく、セキュリティ面での被害拡大は抑えられているようです。ただし、攻撃の巧妙さから復旧作業が難航しており、専門家による対応が急がれています。

業務停止の詳細

システム障害の直接的な影響として、以下の業務が全面停止しています:

  • 酒類(ビールなど)、飲料、食品の国内受注業務
  • 同商品の出荷業務
  • お客様相談室などのコールセンター業務

これにより、グループ全体の約30工場(アサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品など)の多くで生産が一時停止しています。出荷ができないため、在庫の積み上げを避けるための措置です。10月1日時点で、復旧のめどは依然として立っておらず、長期化の懸念が高まっています。

商品供給への影響と消費者への波及

このシステム障害は、単なる社内業務停止にとどまらず、消費者の日常生活に直結する商品供給の遅延を引き起こしています。特に、ビールや清涼飲料水の需要が高い秋季において、深刻な影響が出ています。

小売店・飲食店への配送遅延

アサヒグループHDの商品は、スーパー、コンビニ、飲食店などで広く販売されており、出荷停止によりこれらの店舗への商品到着が遅れています。共同配送システム(アサヒの倉庫からキリンやサッポロの商品もまとめて配送されるケース)を利用する飲食店では、在庫不足が急速に深刻化。樽生ビールの供給が滞り、ビアガーデンや居酒屋での営業に支障をきたす事例が報告されています。特に、10月1日以降の週末需要を考えると、品薄状態が全国的に広がる可能性があります。

コープこうべ宅配

コープこうべの宅配では一部の商品について、欠品等が発生しています。
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消費者への直接的な影響

一般消費者にとっては、馴染みの商品(例: アサヒスーパードライ、三ツ矢サイダーなど)が店頭から姿を消す事態が発生。オンライン注文や宅配サービスを利用するユーザーも、受注停止により商品が届かない状況に直面しています。食品部門の影響で、レトルト食品や冷凍食品の供給も滞り、日常食料品の選択肢が狭まる恐れがあります。障害の長期化により、代替品の価格高騰や市場全体の混乱が懸念されます。

今後の見通しと対応策

アサヒグループHDは、復旧に向けた調査と対策を急いでいますが、10月1日現在、具体的な復旧時期の発表はありません。グループは「お客様および取引先の皆さまにご迷惑をおかけし、おわび申し上げます」とコメントを発表し、影響を最小限に抑えるための代替供給ルートの検討を進めています。

イベント・新商品発売への影響

この障害の余波として、10月1日に予定されていた新商品発表会が中止となりました。また、10月発売予定の新商品(ビール関連)のリリースが延期され、マーケティング活動にも打撃を与えています。具体的には、アサヒ飲料の「ウィルキンソン ドライジンジャエールレモン」などの6品目と、アサヒグループ食品の「ミンティアブリーズ シャインマスカット」などの6品目、計12商品の発売が延期されており、新たな発売日は未定です。復旧後には、遅延分の供給回復が急務となります。

長期化した場合の懸念

障害が1週間以上続く場合、外食産業や小売業界全体への波及が拡大し、経済損失は数億円規模に上る可能性があります。サイバーセキュリティの強化が今後の課題として浮上しており、他の大手企業への警鐘ともなっています。消費者向けには、代替ブランドの利用を推奨する声も上がっていますが、アサヒ商品のシェアが高いため、業界全体の対応が求められます。

本件は現在進行中の状況ですので、最新情報はアサヒグループHDの公式サイトや信頼できるニュースソースで確認してください。この障害は、デジタル化の進展に伴うサイバーリスクの現実を改めて示す事例と言えるでしょう。