家賃高騰の現状
2025年現在、日本国内、特に首都圏を中心とした都市部で家賃の高騰が続いています。物価上昇の影響を受け、賃貸物件の家賃は過去最高水準を更新しており、入居者の生活に深刻な負担を強いています。以下に、主なデータと事例を基に詳しく解説します。
首都圏の家賃上昇トレンド
不動産情報サービスのアットホームによると、2025年1月から3月の繁忙期において、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県のマンション平均募集家賃は全面積帯で前年同月比を上回りました。特に、カップル向け物件では首都圏5エリア(東京23区・東京都下・神奈川県・埼玉県・千葉県)で2015年1月以降の最高値を更新。カップル向け家賃は前年比7.7%上昇し、平均7,544円の増加を記録しています。また、大型ファミリー向けも前年比5.3%上昇し、13,413円の増加が見られました。
東京23区の具体的な事例
東京23区では、家賃値上げの通知が相次いでいます。NHKの報道によると、2025年4月時点で東京23区のマンション平均家賃は過去最高値に達し、大学生を中心に不安の声が広がっています。例えば、文京区の本郷キャンパス周辺では、引っ越しを控えていた学生が家賃上昇を理由に更新を選択するケースが増加。SNS上でも、「家賃が5,000円値上がり」「年間12万円アップ」といった投稿が目立ち、引っ越しを余儀なくされる入居者が続出しています。
さらに、東日本不動産流通機構のデータに基づく予測では、2027年までに一部の区で家賃が「もう住めなくなる」水準に達する可能性があり、2025年Q1時点でシングル向け家賃が初めて10万円を超え、ファミリー向けは1年で3.2万円上昇しています。
全国的な影響と消費者物価指数
全国的に見ても、総務省の家計調査(2025年2月分)では、2人以上の世帯の消費支出が前年比3.8%増加し、住宅関連費の負担増が顕著です。消費者物価指数(生鮮食品除く)は2025年2月時点で上昇を続け、住宅費全体の押し上げ要因となっています。特に、低所得者層や若年層への影響が大きく、一人暮らし需要の増加が家賃高騰を加速させています。
家賃高騰の主な原因
家賃の高騰は、経済・社会的な複数の要因が複合的に絡み合っています。主にインフレ、需給バランスの崩れ、運営コストの上昇が挙げられ、これらが賃貸市場全体に波及しています。以下で詳しく見ていきましょう。
全体的なインフレと物価上昇
新型コロナ禍後の金融緩和、ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰、世界的なサプライチェーン混乱が引き起こしたインフレが、家賃上昇の最大要因です。2025年6月の消費者物価指数は前年比3.3%上昇し、食料品やエネルギーの値上げが続いています。これにより、賃貸オーナーの維持コストが増大し、家賃への転嫁が進んでいます。特に、2025年度の消費者物価指数上昇率は2%台半ばと予想され、高水準が継続する見込みです。
供給不足と需要増加
建設業の人手不足が慢性化し、新規賃貸住宅の供給が追いついていません。一方、20代を中心とした一人暮らし需要が急増しており、18~26歳の調査では「独立したい」「プライバシーが欲しい」といった理由で需要が拡大。結果、空室率の低下と再募集時の賃料変動率が10%上昇する事態となっています。首都圏では、テレワークの定着による郊外人気と都心回帰の両方が需給を逼迫させています。
運営コストと税負担の増加
賃貸オーナー側では、固定資産税の引き上げ、修繕費や人件費の高騰、マンション共用部の光熱費上昇が負担となっています。60代のオーナーの声として、「不具合時の修繕費用や人件費が上がっており、家賃上乗せせざるを得ない」との指摘があり、これが値上げの正当な理由として認められています。また、賃金上昇(2025年2月現金給与総額前年比3.1%増)も間接的にコストを押し上げています。
その他の社会的要因
外国人需要の増加や地価の上昇も家賃を後押ししています。公示地価の上昇が賃貸市場に波及し、2025年春の家賃動向では全面積帯で上昇が確認されました。また、借地借家法では経済状況の変動を値上げの正当理由と定めており、オーナーの経営安定化が優先される傾向にあります。