・パチンコ運営会社社長ら3人再逮捕
・パチンコ業界の参院選参戦の経緯と目的、及び阿部恭久氏の今後
パチンコ運営会社社長ら3人再逮捕事件の詳細
事件の概要
2025年9月16日、警視庁は公職選挙法違反(買収)の疑いで、パチンコ店運営会社「デルパラ」(本社・東京都港区)の社長ら3人を再逮捕しました。この事件は、2025年7月の参議院選挙比例代表で立候補した自民党公認候補者・阿部恭久氏(66)への投票を従業員らに呼びかけ、見返りに報酬を約束した疑いが持たれています。初回の逮捕は8月26日に行われ、社長の山本昌範容疑者(60)ら6人が逮捕されましたが、今回の再逮捕は捜査の進展により新たな容疑が浮上したものです。
- 事件の核心: 2025年7月の参議院選挙(比例代表)で、自民党公認候補者の阿部恭久への投票を買収する形で報酬を約束した疑いで、パチンコ店運営会社「デルパラ」(本社:東京都港区)の幹部らが関与した公職選挙法違反事件です。最初に6人が逮捕され、その後さらに3人が再逮捕されました。
- 規模の大きさ: 全国の「デルパラ」店舗(約100店舗以上、従業員数千規模)の店長らを通じて、候補者の演説動画を送信し、投票を呼びかけました。店長らは「違法だと知りながら本社の指示に従わざるを得なかった」と供述しています。
- 関連人物: 阿部恭久氏(66歳、当時落選)はパチンコ業界のトップ団体「全日本遊技事業協同組合連合会」(全日遊連)の副会長を務めていました。業界とのつながりが事件の背景にあると指摘されていますが、阿部氏本人は「関与を否定」しており、捜査中です。
逮捕・再逮捕の経緯
- 初回逮捕(2025年8月26日):
- 警視庁と7県警(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬)の合同捜査本部が、「デルパラ」の幹部ら6人を逮捕。
- 容疑: 公職選挙法違反(買収約束)。
- 役割分担: 社長らが方針を決め、幹部が店長らに説明。LINEや動画を使って従業員に投票を促しました。
- 逮捕容疑者:
- 山本昌範社長(50歳、韓国籍、本名:李昌範)。
- 常務取締役ら5人(男女)。
- 初回捜査で、約250人の従業員への買収が明らかになりました。送検時には山本社長が笑うような仕草を見せ、世間から批判を浴びました。
- 再逮捕(2025年9月16日):
- 合同捜査本部が、初回逮捕の容疑者からさらに3人を再逮捕(山本社長を含む)。
- 新たな容疑: 追加の107人に対する買収約束。初回捜査で新証拠(LINEのやり取りや内部文書など)が浮上し、買収の全容が拡大。
- 再逮捕容疑者:
- 山本昌範社長(50歳)。
- 同社幹部2人(詳細非公表)。
- これにより、買収対象者は合計350人以上に達する可能性が出てきました。捜査本部は「全容解明へ強力に推進」との姿勢を示しています。警察庁の楠芳伸長官も「悪質な選挙妨害」として、業界全体への警鐘を鳴らしています。
事件の背景と影響
- 手口の詳細:
- 会社幹部は、2025年7月の選挙直前に、全国の店長らに候補者の演説動画を送付。「投票確認後、1人あたり数千円~1万円程度の報酬を支給」と約束。
- 従業員には投票の証明(自撮り写真など)を求め、組織的な買収を図った疑い。
- 店長らの供述: 「本社の指示で違法行為を強いられた」「報酬の原資は会社の福利厚生費から」との声。業界の「票の集中」文化が背景にあると分析されています。
- 業界への波紋:
- パチンコ業界は警察庁の厳格な規制下にあり、今回の事件でイメージが悪化。経産省への管轄移管を望む声が高まっていますが、事件が業界の「裏側」を露呈し、激震を呼んでいます。
- 自民党や阿部氏の選挙戦略にも影響。阿部氏は落選しましたが、業界支援の疑いが国会で問題視されています。
- 法的処分:
- 買収罪の罰則: 3年以下の懲役または禁錮、または50万円以下の罰金。組織的・大規模な点から、重い判決が予想されます。
- 捜査は継続中で、追加逮捕の可能性あり。阿部氏の関与も焦点です。
注意点
この事件は、選挙の公正性を脅かす大規模買収として注目されており、警察は業界全体の選挙違反を洗い出す方針です。
パチンコ業界の参院選参戦の経緯と目的、及び阿部恭久氏の今後
パチンコ業界が参院選に参戦した経緯
パチンコ業界は、2025年7月の参議院選挙(比例代表)で、業界団体「全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)」の理事長だった阿部恭久氏を自民党公認の組織内候補として擁立しました。これは業界初の本格的な政治進出で、以下のような経緯で進みました。
– 過去の支援の課題: 2019年参院選での尾立源幸氏や2022年参院選での木村義雄氏への支援は落選に終わり、組織票の活用が課題でした。2024年末に阿部氏擁立の方針を固めました。
– 自民党公認と選挙準備: 2025年3月、自民党は阿部氏を比例代表候補として公認しました。全国約6,700店舗のホール関係者に支援を呼びかけ、7月3日公示、7月20日投開票の選挙戦を展開しました。阿部氏は約8.8万票を獲得しましたが、比例候補31人中20位で落選しました。
– 選挙違反事件: 選挙後、「デルパラ」の社長ら幹部が、従業員約250人に阿部氏への投票の見返りに現金(1票あたり3,000~4,000円)を約束したとして逮捕されました。業界の組織的な選挙活動が違法行為に発展し、警視庁と7県警の合同捜査本部が捜査を進めます。
参院選参戦の目的
パチンコ業界の参戦は、業界の存続と地位向上を目指します。主な目的は以下の通りです。
– 規制緩和と風営法改正: 風俗営業法の厳しい規制(営業時間や出玉制限)を緩和し、パチンコを「健全なエンターテイメント」として位置づける法改正を進めます。業界は「不当な不利益」を解消するため、議員の必要性を訴えました。
– 政治力の強化: 自民党と連携し、約10万票の組織票を活用して、雇用の維持、統合型リゾート(IR)推進、税制優遇を目指します。店舗数6,706、市場規模15.7兆円、参加人口660万人と大幅に減少する危機感から、政治力の強化が急務と考えました。
– 業界存続の危機意識: ギャンブル依存症対策や若者のパチンコ離れが進む中、議員擁立は業界の未来を守る「最後の砦」と位置づけました。事件でイメージは悪化しましたが、規制改革の必要性を引き続き訴えます。
阿部恭久氏の今後の展望
阿部恭久氏は落選後も業界トップとしての影響力を維持しますが、選挙違反事件の影響で先行きは不透明です。以下に展望をまとめます。
– 事件との関わり: 阿部氏は買収事件への関与を否定し、「デルパラ社長とは電話で一度話しただけ」と説明しました。2025年9月16日現在、逮捕されておらず、捜査に協力する姿勢です。直接関与の証拠は乏しいですが、捜査の進展で事情聴取の可能性もあります。
– 自民党と業界内の立場: 自民党は事件を「悪質」と位置づけ、党内で責任論が浮上しました。阿部氏への処分は未定ですが、次回選挙での公認は難しい状況です。全日遊連理事長の続投は可能ですが、事件の責任論で辞任圧力も予想されます。
– 政治的キャリアとリスク: 再挑戦の道は残りますが、事件のイメージ悪化が課題です。裏方としてロビイスト活動を続ける可能性もあります。公職選挙法違反(買収罪:3年以下の懲役または50万円以下の罰金)の捜査結果次第で、関与が認定されれば業界追放のリスクもあります。2025年秋以降の捜査進展が鍵となります。